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2014年1月11日

長野不白会初釜

大場雪絵(長野不白会)

初釜風景
 一月十一日、長野不白会の初釜が行われました。
 日頃の社中お稽古ではお目にかかれない諸先輩方とご一緒させていただける、ありがたい機会です。私は茶席の当番の一人として、当日を迎えることとなりました。出席者総勢二十一名。その中には小学生のお孫さんが二人。小さな体に華やかな着物、髪もかわいらしく結い上げて、茶席をさらに晴れやかな場としてくれました。驚きましたのは、そのお嬢さん方が姿勢も正しくその場に座し、飽きる事なく茶席の設えや点前を、静かに興味深く見守っていたことです。
 私は当日のお当番として緊張感の緩むことのない一日でした。学んできたことをそのまま実践すればよいと思うものの、大勢のお客様を前にするといつものお稽古とは違い、いつの間にか肩に力が入ってしまいました。
 しかし、いざ自分の薄茶点前の出番となり、ふと心に甦ってまいりましたのは、過去にお家元招請研究会で薄茶点前の割稽古の一人として、お家元のご指導を受けたときのことでした。一つ一つの動作の意味を説いていただき、お客様を想い、もてなす気持ちを点前に込めることを教えていただきました。その時の記憶が甦り、緊張感の中にもお客様に美味しい薄茶を召し上がっていただこうと、点前に集中することができました。また、李支部長をはじめとする皆様の支え、優しいお声掛け、数々のお心遣いが私を救ってくださいました。終わってみれば、まさに一座建立といえる、素晴らしいお初釜となったと想います。
記念写真
 そして、小学生の二人のお姫さまが陰点ての薄茶運びを「やってみたい」と、自ら進んで運び出してくれました。あどけない中にも、緊張を恐れることなく挑戦していく勇気と凛々しさに、またひとつ若い力とその可能性に驚かされ、感銘を受けました。
 茶席は、主客問わず皆で作り上げるもの。諸先輩方から小さなお子さんたちまで、一人余さずそれぞれが主役であったと思います。その中で、微力ながら茶席当番の一翼を担うことができ、わずかでも皆様のお役に立てたのではないかと慶びを感じております。自らの反省点は今後に生かしつつ、今は初釜の席でご一緒いただきました皆様お一人お一人にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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2013年12月14日

家元招請研究会に参加して

家元招請研究会【体操十種とテーブル茶】

雪田弘子(青森不白会)

立居の稽古
 平成二十五年十二月、前日より降り出した雪がお家元を歓迎するかのように一面の雪景色でお迎えしました。外の寒さもよそに今回の研究会は体操十種をメインにお家元のお手本を拝見して、すぐに実習という形で進行しました。日常の生活習慣が問われるぐらい身体が動かない中、お家元のしなやかな動きを見て日頃から鍛練され精進なされていると感じました。参加者の様子を確認しながら「怪我に注意する、無理をしない」という点に心配りをいただきました。
 私達はしなやかな美しい動きではありませんでしたが、一生懸命覚えようとした姿勢が、うっすら汗が滲むくらいの運動が楽しい時間でした。お家元の「毎日続けていくことで自然に身につき、その動きがお茶のお点前の所作に反映される。継続することで普段のお稽古にも役立つ」という言葉に感銘を受けました。体操十種全部はできなくても自分に適した項目を見付けて続けていくという発見もあり、家元監修のDVDの完成を楽しみにする内容でした。
テーブル茶
 第二部は、「テーブル茶会」お客様をお招きして、お家元のお点前を拝見しながら勉強するという設えで始まり、お家元がお持ちになったお道具を使用してお客様を「おもてなし」する様子を拝見しました。その中で季節の八寸と一緒に出したお酒を入れて使用したお道具は、李朝の趣のある貴重なものでした。お猪口も仁清など四品を拝見できました。
 酒肴の楽しい時間の後のお茶は実に美味しいものですというお言葉通り、ふんわりとしたきめ細かな泡のお茶を点てられて、お招きされたお客様も満足されていました。今回使用したお道具。お茶の進め方の説明を聞きながら感じたことは自分で準備していくことで招く喜びと、もてなされる喜びをお茶を通して双方で共有することができると感じました。お茶会という大きな席を経験する必要もありますが、お茶は自宅でする「テーブル茶会」をどのように進行してお茶をお出ししていくかを考える課題をご提示され、時代の流れに沿った奥深さを勉強しなくてはと思いました。
 はじめての参加でしたが、感動、感銘する機会が多い経験の一日でした。

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別世界のようだった研究会

家元招請研究会−【体操十種・テーブル茶】

工藤宗幸(青森不白会)

ご持参の器を拝見
 十二月十四日、風は冷たいものの晴天の八戸から五人で車に乗り、青森の家元招請研究会へ向かいました。青森に近づくにつれて猛吹雪に遭遇してしまい、なんとか辿り着きましたら、すでに体操十種が始まっていました。早速隅の方で教えていただいているうちに先ほどまでの高ぶった気持ちがすーっと落ち着いて少しずつ平静に戻ることができました。 
 当日の「体操十種」は、膝の悪い私にとっても「相撲式」以外はそれほど負担にならず、むしろ終了後は清々しい気分になることができて、精神的にも効果があるということを知ることができました。その道の高名な先生によると、認知機能向上のためにも、食事、睡眠以上に運動が大切だということです。
 午後の「テーブル茶」では、お正客にとのご指名で、お迎付をいただき入席すると、お床には宗匠の「海幸 山幸」の真新しいお軸が掛けられていました。ほどなく、ご持参の高麗の徳利と種々の珍しいお盃でまずは一献、お当番の山本先生お心尽くしの八寸をいただきながら、いろいろなことを教えていただきました。一番印象に残りましたお話は、『ひとゝき草』でも拝読しておりましたが、流祖様ゆかりの京都大徳寺玉林院と本法寺でのお茶会のことでした。三月十六日は玉林院大龍和尚さまのご命日だそうで、毎月十六日には京都の有志の方々で掛釜をなさっているとのことでした。一度皆で伺ってみたいものと思いました。
 先ほどの徳利が花入に変わり、宗匠直々のお薄をいただき、この上もなく有り難くおそれ多いことと感じいりました。私達も日頃このように八寸がわりに何か簡素な肴など用意して、お客様や友人たちとテーブルでおもてなし茶会をしたらとても喜ばれそうに思いました。
 終了後、会場の外に出ましたら相変わらずの吹雪模様で、雪がお好きと言われた宗匠のために、明日も津軽海峡冬景色を願い、ようよう八戸に辿り着いてみると、朝出発した時と同じように雪一つ見当たらず穏やかな街並みで、いろいろな意味で別世界に行って帰って来たようでした。
 

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2013年12月1日

お茶会、初体験

森 宗絹(八女不白会)

茶席風景
 平成二十五年十二月一日、八女不白会の孤峰忌茶会が、開運寺で催されました。会員の親戚の方が外国の人と結婚し、列席したロシアとイタリアの友人たちから「日本の文化に触れたい」との申し出があり、おいでいただきました。茶席の中では三カ国語が飛び交い、賑やかなお席となりました。帰りには座禅も組まれ、何もかもが初めての経験でしたと喜んでいただきました。
 その時の感想が寄せられましたので、紹介します。
   ◇   ◇  ◇
  私事でありますが、十一月三十日にロシア人のエレナと結婚しました。ロシアから五名、イタリアから二名が来日し、開運寺さまでのお茶会へ招待していただきました。
 素晴らしい紅葉の庭を前にはじめてのお茶をいただき感動。日本人でも考えつかない質問が出るなどびっくり。また座禅も経験し警策を受けた人もいました。
 お茶会の関係者及びお寺の方々には大変親切にしていただき、素晴らしい一日を過ごすことができました。全員が日本文化のすばらしさに感動、感激し、帰国する事ができました。ありがとうございました。(蒲池 正規)
   ◇   ◇  ◇
  開運寺で過ごした時間は私達にとって驚き以外の何者でもありませんでした。本当は今回体験するお茶会は簡単な略式だろうと思っていたからです。
 しかし私達を導いてくれた道は、予想、想像を超えるものでした。
 お寺(茶室)に通された瞬間目に入ってきた世界は、言葉には言い表せないものでした。着物姿の方々の凛々しさ、作法の美しさ、流れるような時間の静けさ、そして漂う空気が厳かであることに圧倒されました。
 座禅修行体験では御住職の警策を持ち歩かれる姿は格好よく、また警策をいただいた体験はとても神秘的でした。(母は数日の間、時差ボケに悩まされ、夜眠れない日が続いていましたが、警策をいただいた日以降は不思議と眠れるようになったそうです。)  何世紀と受け継がれる異国の伝統、文化に対し、私たちは多大な好奇心と素直な気持ちで少しでも多くのことを理解しようとしたため、質問、二カ国語(イタリア語、ロシア語)による通訳等でその場の雰囲気を壊してしまったようになってしまい、申し訳なく思います。ご理解いただければ幸いです。
 この短いコメントで異国からの人達(私も含め)の感想をまとめようと勤めましたが、やはり人それぞれの気持ち、思いまでは正確に伝えることは難しいです。ただ、一言言える事は、今回日本で体験した人生初のお茶会、禅、それは生涯皆の記憶、心の中に残り続けます。それは私が数年前に初めて経験した川崎のおばさんの家でのお茶会と同じです。最後に、お茶会、御住職並びに関係者の方々へ感謝申し上げます。ありがとうございました。(エレナ〈蓮池正規訳〉)
茶席風景
一服

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乱飾相伝式に出席して

 末永惠雪(静岡不白会)

 昨年十二月一日、家元邸花月の間における相伝式にて、乱飾の許状とともに看板をいただくことができました。
 お茶との出会いは、稽古に出かける妻を送り迎えする際、先生の茶室に上がったことからでした。残念ながら妻は仕事の都合もあって挫折してしまいましたが……。また、建築設計に関わる仕事柄、茶室の間取りと収まりを知りたいという気持ちや、茶碗などの道具類に少なからず興味があったこともきっかけになりました。
 以来九年近く立ちますが、当時は看板をいただくなどとは思ってもいませんでした。ここまで続けることができたのは、静岡支部の先生方や先輩の皆様方のおかげだと感謝しています。
 家元邸にお伺いしたのは、一年前に社中の皆様と初釜に参加してして以来になります。二度目ということで少し緊張感が和らいだせいか、家元にお酌をしていただき、この日はすっかり飲み過ぎてしまいました。今回も美味しいお料理とお酒を堪能し、また家元直々のお点前による濃茶をいただくという、言葉では表せない豊かなひとときを過ごすことができました。
 立派な道号をいただいたとは言え、納得のいく点前もできず、つたない所作にて稽古をしていますが、美味しいお茶を点ててお客様をもてなしたい、という気持ちだけは強く持ち続けてこれからも精進していきたいと思っています。

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2013年11月10日

青峰会の炉開き勉強会

高田不白会青峰会

床
●大島恵雪
 十一月十日青峰会は、「炉開き勉強会」を計画いたしました。当日は、点心、お炭、お濃茶、薄茶と進み、ご亭主がお薄のために用意された茶碗の説明をされながらお客様との会話が弾んでいるところで、気がついたことがありました。それは、自分の気持ちがお客様の方に向いていなかったことです。
炭点前
懐石と一献
お炭点前が担当でした私は、手順のことが気になり、お客様の方に気持ちが向く余裕はありませんでした。しかし、ご亭主は、お客様のことを考え、思い描きながらお道具を準備されたことを思うと、自分がお客様の方に向いていなかったことを深く反省いたしました。
 場所の提供や細かなところまでご準備いただいた木村先生や、お道具を用意された方、お料理を用意された方、お出かけいただいたお客様、参加された全員のご協力により、勉強会が開催できたことを感謝いたしました。

   ◇   ◇   ◇

●木村隆
 炉開きに、会員でない私も招かれ桃源庵*で行われ、小間の床に掛物のみで炭点前、懐石は広間で、竹田会長を中心に役員三者持ち寄り水屋で盛付け。お膳が持ち出され、簡素で明解におしのぎの意味を感じ初座を軽やかに済ませて、中立。銅鑼の迎え付、席入り、躙り口より床の椿一輪目に飛び込み近寄り拝見。掛物(飛鳥井雅有公の歌切)と花が一体に炉は赤々と松風爽やか「……とは墨絵に描きし……」このような風情なのかな?
   濃茶一啜二啜と服合いの挨拶もそこそこに思いっきりたっぷりいただき、宗八の黒がお詰めまで回り、お茶の多さに迷い気味。亭主に茶が回り主御満悦、一座建立に主も安堵の笑みと。私事ですが、昨秋妻が急逝し二年ぶりに炉が開かれ釜が掛けられこの家の主故に万感の想い憶い思い……
友集いおもい一つに開炉かな
  *「桃源」陶源にちなみ と、名心庵宗雪様の銘名(昭和五十三年)

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2013年11月3日

郡山文化祭市民茶会

大竹征子(福島不白会)

茶会風景
 街路樹も色づき、菊薫る十一月三日文化の日、郡山諸流連盟による市民代茶会が開催され、江戸千家も郡山男女共同参画センター一階和室に、釜を掛けることとなりました。
 前日は二十畳もの大きな和室を、床、畳と拭き清めて待つうち、社中の的確な指示の下、茶道口やお客様の入り口など考慮しながら、お釜を掛けました。待合、受付、水屋と手際よく場所が定められ、心を込めて準備した茶道具を並べ明日を待ちました。
 当日は好天に恵まれお席もさらに清々しく、床に大亀老師の「一期一会」のお軸を掛け、社中の持ち寄りの数種の花を野に咲いているかのように、大振りの広州の花入に生けました。残花の一輪の竜胆や、つる梅もどきの赤い実が美しく装い、お客様を迎えるにふさわしい床に整いました。社中一同気を引き締め、心からおもてなししなければと席入りを待ちました。
 お客様が座に着かれ、初席主を勤める先輩とお客様との会話を、茶道口でそっと見守っていた先生の安堵とやさしい笑顔がとても印象に残っています。
 お点前は中置で「大変珍しいですね」のお言葉。主茶碗は高麗柿の蔕、替茶碗は紫交跡の菊を揃えました。この時節にぴったりな取り合わせですねのおほめをいただき、しっかり手に取りご覧になっていました。またこの茶室の障子からの光も、この場を和ませ美味しいお菓子と、お茶を差し上げることができ、大変有意義な一日でした。
 最後のお客様をお見送りし今日の反省をしたなかで、岩谷先生より「大寄席の茶会は皆の協力なしでは行えないことや、時には諸流の自由参加のお茶会などにも出かけて、参考にすることも勉強になりますよ」とお話がありました。私達郡山市民も、大震災後二年八カ月が経ちましたが、皆苦しみに耐ええながらも、このような茶会で皆様の心を癒すことができたのではないかと思いました。

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2013年10月29日

「体操十種と」「テーブル茶」

家元招請研究会

高田不白会

一献から
●テーブル茶で正客を務めて…………田村英夫
 去る十月二十九日、高田別院会館で家元招請研究会が行われました。
 午前中は、お家元が長年取り組んでこられた体操十種のうちから五種をご指導いただきました。
 体操の解説を伺いながら身体を動かし、なまった身体も少し動かしやすくなりました。  点前は基本的な姿勢を身に付けるにはまず正しい姿勢が必要で、そのために正しく身体を動かすこと、柔軟な対応が大事だと痛感しました。
 さて、午後からは本日のテーマの一つ「テーブル茶」です。お客は私を含め三人です。そして正客は私
。  茶事は正客に左右されると言われており、お家元がご亭主で一層緊張が走ります。先ずは一献ということで季節の食材が出され、ご亭主役のお家元からお酒を注いでいただき「茶事はお酒が大実なのですよ、お茶を美味しく味わうためには」と勧められるままいただき、お酒のおかげで少し緊張がほぐれました。
 次にお薄です。お家元がゆったりと丁寧に、たっぷりと点てられたお薄を一服口にしてお茶の美味しさを堪能させていただきましたが、会話の楽しむ事を忘れてしまいました。
 「本来茶の湯は、家にお客を招いてご馳走しお茶を一服差し上げて楽しむことですよ」、と家元。いつか自分でもお客を招いて楽しんでみたいと思った一日でした。
家元による一服
   ◇   ◇   ◇
●久し振りの研究会…………吉田敏子
 今年は十月二十九日のウィークデイがお家元招請研究会でした。私にとっては勤務を調整し何年かぶりに参加することができた研究会でした。課題は「体操十種」「テーブル茶」。テーマは美と精神性の学びではと捉え新鮮な気持ちになりました。
 嬉しい気持ちでお迎えしたお家元はやはりいつもの品格と清々しさをまといながら私達の前にお立ちになられました。年月の重みを感じながら「体操十種」の基本からです。瞑想しつつ正しく美しい姿勢をお示しになられ頭の先から足元まで細胞が蘇っていく心地よさでした。気功太極などお家元に習って同じ形をなしているつもりでも私の動き、姿勢呼吸法はなかなか難しく自分のものとするには時間がかかりそうでした。集中するただ中にも思うこと、感じる事は様々に迫り来るものがありました。お家元に直々に触れ合うことの有り難い幸せ、江戸千家に学んだ日々夢中になってひたすらお稽古に励んだすべてがいとおしく、押し寄せて来るのでした。そしてまた年月を重ねてこその「体操十種」を用いて健康と美しさのある正しい姿勢の重要性、新たな気持ちでお茶の所作を学んだのでした。奥義と思い今後の「体操」の学びが待たれます。
 終わりなきお茶の美の世界、文化芸術をますます諭すお家元、その教えにどこまで行ってもたどりつけないでしょう。だからこそ引かれ続けるのです。この人生に江戸千家のお茶の世界を知ったことに深く感謝しています。最後にお家元の篠笛そのものの幽玄さに魅了されました。楽しい一日をありがとうございました。
篠笛の凛と射られた音ひとつ秋の夕闇に響いて幽けし

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2013年10月27日

三木町棚の扱い

宗康先生招請研究会

田山宗由(岩手不白会)

三木町棚の扱い
 十月二十七日に宗康先生をお迎えして、会員百余名の出席にて研究会が開催されました。主な課題は、三木町棚、江岑棚の説明と使い方でありました。資料の図でその違いを説明されました。三木町棚は杉木地の色の美しさ、木目の向きの工夫による風情、江岑棚より少し高さがあることによって、すっきりと見えて水指との間隔といい使い勝手がよく、流祖も愛用なされたことを伺い、一層身近に感じました。
 その後、三木町棚を用いて、茶事形式にて花所望を取り入れて後座をいたしました。花所望では、家元が特別被災地の方々に思いを寄せられ、「拈華」と銘をつけられた細長竹の花入を掛けさせていただきました。お正客は石蕗、野紺菊、蔓梅擬、秋明菊を入れられ、花入と花がよく調和し、お床に映えました。厳粛なお濃茶のあと続きお薄をしました時、三木町棚での取り扱いに注意を払うべきことをお勉強いたしました。つまり、濃茶器と薄茶器の入れ替えで、濃茶器の扱いのご指導をいただいたことです。
 四畳半での茶事を想定してのお稽古でしたので、詰の役割や茶道口、通い口についてもご指導いただきました。そのあと七種の蓋置と宝珠、駅鈴の蓋置の扱い方の基本をご教授いただきました。基本の大切さ、学ぶ事の楽しさを新たにし、皆様の協力で爽やかな充実感を味わい研究会を終えることができました。
 

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テーブル茶での「おもてなし」の心を学ぶ

家元招請研究会

藤枝宗義(新潟不白会)

テーブル茶
 十月、新潟市内の燕喜館で研究会が催され、私は二日目の二十七日に体操十種とテーブル茶に参加しました。午後からテーブル茶で、私と若い女性お二人がお客の役となりました。
 いよいよ本番になり、亭主役のお家元が持参された祥瑞瓢形の徳利で徳々々とお酒をついでいただき、地元産の鮭や食用菊、銀杏など八寸に盛られたたくさんのご馳走を話題に、また、良寛さんと親交のあった鵬斎さんのお軸をテーマに大変盛り上がりました。お家元の巧みなリードで、見守る大勢の参加者の視線も気にせず、和やかに楽しい時間を過ごさせていただきました。最後に、お家元の流れるようなお盆点前を隣で拝見しながら、美味しいお茶をいただきました。
 日常でもできる「おもてなし」の心を、お家元から直に学ぶことができ、何と贅沢な体験をさせていただいたと大変感謝しています。
 

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2013年10月23日

平成25年 茶壺口切り

八女郡星野村 星野製茶園

 今年も家元が茶壺を預けている九州の茶園で、茶壺口切りの儀が行われました。
五月に製造された碾茶を五カ月間保管した二種の口切りの茶は、孤峰忌の参会者に振る舞われました。
        ◇  ◇  ◇
口切り
口切り
口切り
口切り
口切り
口切り
   謹んで 今年も碾けり茶臼(うす)の音
              *呂宋
   口切りに 集う茶園の家族達
             〈家元スナップ句より〉

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2013年10月15日

「体操」「テーブル茶」の充実した研究会

家元招請研究会

高橋宗陽(山形不白会)

篠笛演奏
 一年に一度、お家元様の御来駕をいただき、山形不白会教授者が集まり研鑽を積んでおります。
 今年はNHK大河ドラマ「八重の桜」の主人公八重子さんとも縁のある米沢市にお運びいただき、小野川温泉のひと宿を会場とし資格者二十一名出席のもと充実した一日を過ごすことができました。まず、お家元のご指導による体操で心身を爽やかにし、茶道と体操との関わりのご講義を賜り「健全な身体に健全な精神が宿る」ことを改めて自覚させられ、形と技術のみに捕らわれて根幹を置き去りにして満足していたことを反省し、むべなるかな茶道の浅学を思い知りました。
 午後は、お家元自らのご亭主で客三名をお迎えなさってのテーブル茶を拝見。東京よりご持参くださいました珍しい須恵器に秋の花一輪で何の変哲もないテーブルが一気に格調高く、向付と「山のもの海のもの」の八寸でお酒も会話もお家元のエスコートで和やかに、客人はさぞかしく満足のひとときかと見学者としては、ただ羨望の一言に尽きるばかり。最後にはお家元の篠笛で小さな支部を励ましてくださったのでしょうか。リクエスト曲に応じてくださり、アンコールの声にも快くサービスいただき、やっぱり今年も江戸千家に学べる幸せを感謝一杯の勉強会でした。
 

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2013年10月2日

お茶会で拡がる交流の輪—江戸千家不白会が点前

ロサンゼルス不白会(西村宗櫛社中)

テーブル茶・夏
テーブル茶・夏2
夏は氷点てで
 今年の家元の研究会テーマでもあるテーブル茶を、ロサンゼルス不白会西村宗櫛社中は実践的に取り入れて活動しています。
 その様子がロサンゼルスに本拠を置く日本語新聞『羅府新報』に掲載されました。抜粋して紹介します。
      ◇    ◇    ◇    ◇
 小東京のホンダプラザ内にあるお茶とハチミツの専門店「Honey & Green」で定期的に開かれているお茶会に地域コミュニティーの人々が気軽に集い、交流の輪を広げている。
 毎月二回程度の割合で開催されているこのお茶会について、同店の五十嵐達社長は「茶道の基本を通して茶の湯の楽しさを学ぶと同時に、日本の最高品質のお茶と北米を中心とする滋養価の高い天然ハチミツのよさを皆さんに直接味わってほしいとの思いで実施している」と話す。江戸千家ロサンゼルス不白会の西村宗櫛教授が指導にあたる。
 江戸千家不白会は、家庭でも点てられる「テーブル茶」を今年のテーマとして上げており、西村教授は「一般の人が茶の湯に親しみ、自分も習ってみたいと思える楽しい茶会である。亭主と客が時間をかけてゆっくり季節感や花などを愛でながら、交流の輪が広がる場にしたい」と話している。
テーブル茶・秋
テーブル茶・秋2
仲秋の名月の日 秋の風情を楽しむ

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2013年9月19日

お客様に楽しんでいただけるように

杉田佳織(高田不白会)

ポスター
 去る九月十九日〜二十四日、アートサロン遊心堂ギャラリーで、五智窯・木村隆先生の茶陶展が開かれました。二十一日の呈茶のお手伝いをさせていただいたのでご報告致します。
 床には「土 この豊かなるもの」という木村先生五十歳のお祝いの際にいただいたというお家元直筆の書が飾られていました。陶芸をするものとして世界観、土の大切さを今一度考える意味で飾られたとのことで、木村先生の陶芸にかける熱い思いが伝わってきました。
 陶芸をされている方、お茶を習い始めたばかりの方など色々なお客様が作品を見に来られていました。お席でお茶をいただくのははじめてだということで緊張されている方もいらっしゃいましたが、木村先生がお客様に合わせて分かりやすく茶の湯や陶芸、お道具について話をされていたので、リラックスして一服のお茶を楽しんでいただけたようでした。自ら選んだお茶碗でお茶を召し上がられたお客様は、「手に収まる感じがちょうどいい」と満足され、お茶を楽しみながらお茶碗の魅力も感じておられました。
 先生やお客様と一緒にお話しながら、お点前をさせていただき、いろいろな方に自分の点てたお茶を飲んでいただくことの喜びと、出会いの楽しさを感じることができました。
 今回は、一期一会の気持ちをもってお席に入ることの大切さを再確認する良い機会となりました。
呈茶風景
 

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2013年9月15日

水屋の当番を受け持って

家元招請研究会

田中宗正(福岡不白会)

テーブル茶
 日本庭園での家元招請研究会。当日午前中は、体操十種の後半をご指導いただきました。あれほどの数の体操をご考案され、それを実践され、そして自らご指導されておられることは本当に素晴らしく、私も朝目覚めると腹式呼吸や丹田を押したり、あぐらをかいたりと教えていただいた中の数種ではございますが、自分にあった体操を思い出しながら実践いたしております。
 午後からはお家元ご亭主でのテーブル茶。お持ちいただいた花入を見てまず驚きました。二-三世紀頃の首の細長いたいへん貴重なローマングラス、土の中で眠っていた長い年月の間についた色々な色が素敵な景色となっていました。素晴らしい器を目の前に、私の用意した花で合うのだろうかと、とても不安に思っておりましたが、お家元はさっと「桔梗」と「蓼」を選ばれ、あっという間に見事にお入れになりました。今回の研究会のために遠く九州まで大切な花入をお持ち下さいましたことに感謝申し上げます。
テーブル茶2
 また、当日はとても蒸し暑い日でしたので、八寸は涼しさの演出と冷たいものは冷たくしてお出しするということを大切に考えました。後で振り返りますと反省することばかりでございます。
 普段の社中では初座、後座に分けての稽古を心がけております。昼食を点心風にするなど私自身も常に勉強しながらではございますが、社中で自然と身についてくれることを願っております。

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2013年8月25日

研究会の経験を糧として

家元招請研究会−【体操十種・テーブル茶】

酒井毅(福島不白会)

体操十種
 涼風を感じる八月二十五日、東日本大震災で被災し新築なった支部長のお宅で福島不白会家元招請研究会が行われました。
 課題は「体操十種とテーブル茶の実践」です。
 宗匠に、日ごろから身体を動かすことの大切さと体力に合わせた呼吸と姿勢を取り入れた体操の必要性を教えていただき実技に移りました。「わずか三秒で十歳若返り、更に美しくなります」と聞き熱が入りました。
 姿勢を正しく保つ、正しい呼吸を行うことが、内面の美しさにつながり体内の循環を高めることを実技で実感しました。後は継続して健康な日常生活に繋ぎたいです。
テーブル茶1
 体操の後、いよいよテーブル茶で私は次客に入りました。
 ご亭主の宗匠が私たち三人に酒肴とお茶を振る舞ってくださいました。
 テーブル茶では、家元ご持参の影青の水注に友禅菊とオグルマが生けられ、庭先の借景を眺めながら静かな時が流れます。ご亭主が緊張を察して身近な会話を進めて下さり気持ちも落ち着きました。八寸は塗の黒板盆に大葉敷き帆立のソテーにオリーブの実とパプリカが乗り、赤の皆敷にはゴマ豆腐とラッキョウの酢漬けで冷酒が進みました。
 「酒で酔った後のお茶はとても美味しいのですよ」と、不白作の馬盥茶碗で点てて下さったお茶は力強く、いただくとふんわりと香高く喉を通り、なんと優しいお茶なのだろう。思わず「本当に美味しい」と声が出てしまいました。
テーブル茶2
 宗匠と酒肴を楽しみ、不白作の茶碗で宗匠が点てたお茶を二服もいただき、今、日に日に事の重大さを感じます。お稽古を始めて日も浅い私にこのような経験をさせていただいたことに感謝です。この経験を糧に精進したいと思っています。
 宗匠は仙台に向かわれ、皆様も帰られた後、急に夕立が来ました。

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2013年8月18日

福島県民の日、茶会で市民と交流

岩谷宗洋(福島不白会)

ご挨拶
福島不白会前支部長 岩谷宗清氏
 八月二十一日は、福島県県民の日です。郷土への理解と関心を深めるという県民の日を記念し、郡山市では市の指定重要文化財である「安積開拓官の舎」「旧立岩一郎邸」にて、八月十八日、江戸千家福島不白会の担当により記念茶会が行われました。
 林で囲まれたかやぶき屋根の明治開拓時代の郡役所として使われていた建物は、当時そのままの姿を留め、一歩足を踏み入れると、開拓期の人々の息遣いさえも感じられるようです。クーラーも無く水道の設備も建物の外でしかない水屋でしたが、それさえも趣があり、明治時代にタイムスリップしたようでした。
 まだ猛暑の中ではありましたが、襖を全て取り払い吹き抜ける涼しい風や、時折木々の間から聴こえる蝉の声が、ゆったりとした茶会を盛り上げてくれました。
 公園から引き続きの施設であるため、散歩の途中の普段着のままのお客様や、全く初めてで座り方も知らないのでと、笑いながらお席入りして下さった方など、さまざまな方々にお茶に触れていただいたことは、とても嬉しく、このような歴史を持つ場所で、茶会を開けることに幸せを感じながら「おもてなしの心」を改めて思う一日となりました。
なごやかな席中

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2013年8月16日

名物茶碗飾りについて

博子先生招請研究会

玉田宗正(岩手不白会)

名物茶碗飾り1 名物茶碗飾り2
 九月八日、盛岡市中央公民館にて博子先生ご指導の研究会が行われました。
 最初に「名物茶碗」の由来と、現代における「名物茶碗」についてのご説明がありました。研究会では建盞天目「銘宇宙」を用いました。この茶碗は、お家元より岩手不白会が賜ったものです。
 名物茶碗飾りは、茶事形式にて、二通りの方法をご指導いただきました。
 一つ目は、初座に名物茶碗を床に飾る方法で、博子先生がご亭主になって、実際にご指導下さいました。正客から茶碗拝見の所望があり、博子先生のお茶碗の扱い方をつぶさに拝見することができました。実に自然に、大切にお茶碗を扱われるその所作に、出席者一同目が釘付けになりました。そのあと、一献あり、ご亭主もご相伴されました。中立ちのあと後座は、別のお茶碗でお濃茶を点てられました。
 二つ目は、初座において、床にお茶碗を飾らず、後座で茶筌飾りをして、名物茶碗の扱いをする方法でした。茶筌飾りは自分が担当しましたが、健盞天目茶碗でのお点前は初めてで緊張いたしました。ご亭主が名物茶碗の扱いをされた時は、半東も同じような扱いや所作をしなければならないというご指導をいただき、もっともなことであると思いました。
 博子先生には、名物茶碗を用いた二つの茶事の仕方、また名物茶碗を理解して扱う方法や所作を整えることの重要さ、そしてお客も半東も気持ちを一つにすることの大切さを本当に丁寧にご指導いただきました。

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2013年7月31日

高村光太郎の茶道観

石田宗洵(岩手不白会)

   詩集『道程』で芸術院賞を受けた高村光太郎は、その晴れやかな授賞に日の夜、内部に千利休を意識した「独居自炊」と題する侘びしさの漂う詩を書きました。私はこの詩に触発されて「高村光太郎覚書——茶道観と隠逸性を中心に」(盛岡大学日本文学科『東北文学の世界』第二十一号)をまとめてみました。
 戦災により岩手県の山村で「独居自炊」の生活を始めた光太郎は、この地に本阿弥光悦のような芸術村を夢見て、地域での講話に「茶について」を取りあげ、世界の人類に寄与する最も進んだ美と説きました。閑寂な中で精神を研ぎ澄まし、最上の美を見出すところにお茶があると考えていた光太郎は、美の本質を「比例均衡」にあるといい、茶を能面と同様に「節度」「含蓄性」の美しさを持つものと考えていました。山居で湧水を汲み、山の花を生け、湯を沸かして茶を点てている光太郎の「独居自炊」には、精神の自由を味わう生活者の姿がありました。
   

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2013年7月7日

濃茶続きお薄

宗康先生招請研究会

諏訪田宗教(新潟不白会)

濃茶続ききお薄
 去る七月七日、燕喜館におきまして、宗康先生をお迎えして研究会が行われました。テーマは三木町棚を用いての「濃茶続きお薄」でした。私は亭主役、お客様役も同じ社中でしたので、初めての経験ですが、精一杯務めさせていただこうと当日を迎えました。
 七月七日ということで、お道具、お菓子など七夕を意識した設えで、花入は「彦星」という銘でございました。「皆様が織り姫ですね」との先生の言葉に、場が和みました。
 常日ごろ、中野先生からご指導いただいていることを思い出そうとしましたが、目の前のことに追われ余裕がなく、宗康先生にも同じことをご指導いただくことになりました。「お点前ばかりではなく、お客様をもてなす気持ちが大切です」とのお言葉に、おもてなしの精神を、お客様にいかにお伝えするか、今後の私のテーマのひとつとなりました。
 午後からは、七種の蓋置の扱い方、服紗の捌き方、茶器の清め方の実践と、盛りだくさんでありながら丁寧なご指導をいただきました。
 今回、はじめてこのような経験をさせていただき、お茶の世界に導いてくれた母に感謝しました。とても充実した幸せな一日でございました。

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