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■続ドイツからの便り 2■

ドイツの市民大学での「茶の湯入門講座」

野尻 宗明 (ドイツ在住)
 二年程前、独仏共同の文化放送で、NHK制作のテレビ番組「半澤鶴子さんの茶事行脚」が放映されました。私は、風呂敷に包み直した茶道具を車の後部座席一杯に載せて走る半澤さんの姿に、自分を見るような思いがしました。
 二〇〇二年から私が複数の市民大学等に提案し、企画・実行してきた茶の湯を紹介する講座は、今もふたつの市民大学で続けていますが、その難しさは、「ひととき草」102号 (二〇〇八年六月)でお伝えした当時とほとんど変わっていません。
 抹茶の知名度は和食の人気に伴って上昇し、大手スーパーや自然食料品店で手軽に買えるようになりましたが、粗悪な品質のものが高値で売られています。
 また、寒冷で日照時間が短いドイツには、フランスやイタリアのような美術や洗練された料理の文化が発達しなかったので、私の講座が割り当てられるカテゴリーは、「文化」でも「芸術」でもなく、未だに「健康と栄養」です。的外れな期待でなく茶の湯の世界への興味から参加する人が増えるよう、プログラムの講座紹介文を工夫して書いています。
 講座の構成は、約二十年間ほとんど変えておらず、茶の湯の簡単な歴史と抹茶の説明の後、写真やビデオで日本の典型的な茶室を見せて、その特徴を説明、その後私が亭主としての所作と道具を説明しながら見せます。その際、私の説明が具体的であればあるほど、参加者は興味を示して真剣に聞きます。勿論、質問が出れば、その都度答えます。
エランゲンの新聞

Erlangenの新聞に野尻さんの講座が紹介されました。
写真をクリックすると、自動翻訳の記事本文が読めます。

 ひとりひとり、挨拶の仕方、お菓子の取り方、お茶の受け取り方、飲み方を実際に体験してもらった後、希望者に自分でお茶を点ててもらいますが、大抵の人が悪戦苦闘し、笑いが出ます。面白いのは、総じて男性の方が女性より丁寧なことです。
 この写真の講座は、今年七月十日にErlangenの市民大学で、参加者数を九名に限定し、マスクをつけて行ったものです。対面授業が解禁になって初めての講座でしたので、とても緊張しましたが、私も参加者も大いに楽しみ、癒されました。心を許して交わる喜びと静寂という、日常では得難いふたつの要素を共有した後は、初めて会った人達であるにもかかわらず、別れ難い思いがして、皆すぐに帰宅しようとしませんでした。
 次の講座は、予防接種終了者(二回)と快復者のみの限定参加という条件で、十二月十一日を予定していますが、この原稿を書いている十一月末現在、ドイツのコロナ感染者数が、前代未聞の恐ろしい勢いで上昇し、オミクロンという変種も上陸、実施が危ぶまれます。

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