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茶の湯 江戸千家 家元継承記念

本法寺 秋季特別展

令和6年11月1日(金)〜12月1日(日)
日蓮宗本山 本法寺 涅槃会館

 新家元の襲名を記念する展覧会が、京都本法寺において開かれました。前期は「本阿弥光悦の書」展、後期は 「如心斎と川上不白」展で、各期間に記念の講演会が開催されました。
 展覧会の様子、展示品、挨拶文、講演会の様子を紹介します。

展覧会ポスター

【前期】 「本阿弥光悦の書」展

伝来「五郎丸」

重文 法華経経箱

【前期展示品】
(一階)大壁
◦仏涅槃図 長谷川等伯筆(模本)
(ガラスケース)
◦月の釜・伝光悦 赤楽茶碗他  本法寺蔵
   馬上杯・光甫茶杓      〃
          他
(二階)
 掛物(八点)
◦月の和歌  光悦木版 幅    個人蔵
◦光悦 文  慶長期       〃
◎ 〃 重文 法華経添状     本法寺
◦ 〃    正月のこと    江戸千家
◦ 〃    俄に三州      〃
◦ 〃    手本の儀      〃
◦ 〃    客は千ト申ス    〃
◦ 〃    長谷川某宛     個人蔵
置物(三点)
◎ 重文 法華経々箱       本法寺
◦信楽茶入 「五郎丸」     江戸千家
◦如心斎作 茶杓 「客僧」    〃

ごあいさつ

本法寺第九六世 瀬川 日照

 令和六年の「秋季特別寺宝展・茶の湯江戸千家十一代襲名記念」開催にあたり、ごあいさつを申し上げます。あわせて、本法寺と所縁の深い江戸千家様におかれましては、第十世川上宗雪様から第十一世川上新柳様へ家元を継承されますこと、この場をお借りしてお祝い申し上げます。
 これまで本山本法寺では、「春季特別寺宝展」と「秋季特別寺宝展」として、通常展とは別に、本法寺で守り伝えている多くの宝物の中から、皆様のご興味に沿うものを中心に展示してまいりました。今回の秋季特別寺宝展では、「江戸千家十一代襲名記念」として、前期に「本阿弥光悦の書(手紙)」展、後期に「如心斎と川上不白」展の二部構成で特別展を開催いたします。特に二階の展示室には、江戸千家様ご所蔵品を中心に展示していただきましたが、本法寺以外の宝物を展示することは殆どないため、今回の試みが今後の寺門興隆に繋がればと考えております。
 江戸千家様と本法寺の関係は古く、江戸時代の中頃にまで遡ることができます。江戸千家流祖の川上不白(享保四〈1719〉年~文化四〈1807〉年)は、表千家第七世如心斎(宝永二〈1705〉年~寛延四〈1751〉年)に師事して茶の湯を学ばれ、その際に本法寺第三十二世日詮上人と深い信頼関係が築かれたといいます。この背景には、川上家の菩提寺・本廣寺(現在の和歌山県新宮市)が日蓮宗であったことも関係しているのでしょう。
 こうした中で、不白は本法寺が守り伝える中国元時代の画家・銭舜挙の「鶏頭花図」に深く感銘を受け、その絵を描き写し、後に江戸でそれをもとにした「鶏頭蒔絵棗」を制作されたとのことです。今回の特別展では、後期にこの二作品もご覧いただけます。
 また、不白の菩提寺である安立寺(東京・谷中)は、本法寺と本山・末寺の関係にあり、江戸に移られた後も不白は本法寺との仏縁を保ち続けました。安立寺には不白によって、本法寺開山の日親上人をお祀りする「日親堂」も建立されており、日親上人と本法寺への畏敬の念が伺えます。
 このような背景をもとに、今回の秋季特別寺宝展を開催することとなりました。江戸千家様ご所蔵品や本法寺格護の宝物などを通して、江戸時代の奥深い文化を感じ取っていただければ幸いです。
 最後に、この度の特別展開催にあたり、ご協力をいただいた関係各位に深く感謝申し上げます。
 令和六年十一月吉辰日

【後期】 「如心斎と川上不白」展

伝来 「客僧」

【後期展示品】
(一階)前期に同じ
(二階)
掛物(七点)
◦伝舜挙 鶏頭図        本法寺
◦如心斎 画像        江戸千家
◦不白 画像 〃
◦如心筆 茶の湯正脈      〃
◦ 〃  宗雪安名       〃
     宗雪宛
◦ 〃  空蝉の句 継紙    〃
     宗雪宛
◦ 〃  利休辞世 云々 文  〃
置物(五点)
◦鶏頭棗   塩見政誠作   江戸千家
◦「不白筆記」 一冊    堀内長生庵
◦水野大炊頭忠昭筆書状 覚々斎宛
             表千家不審菴
◦信楽 茶入 五郎丸     江戸千家
◦如心斎作 茶杓 客僧     〃

如心斎画像

不白画像

令和六年度 本法寺秋季展に寄せて

江戸千家 川上名心

 この度、私共 茶の湯江戸千家十一世 新柳斎宗雪 襲名記念の展覧会を、京都本法寺に於て開かせて戴きます。私共は流祖川上不白(宗雪)以来、日蓮宗 東京谷中の安立寺が菩提寺で、その本山がここ本法寺という御縁であります。

前期「本阿弥光悦の書(手紙)」展 11月1日~11月14日

 茶の湯の席では床の間の掛物を眺めることから茶会が始まり、茶席の話題の中心になることが多く、絵画、書跡など様々ですが、特に私は歴史上の人物の消息(手紙)に興味がありまして、「書は人なり」と謂われるように、一幅の手紙の中に史実の解明と書の美しさ、そして筆者の日常的な人となりが合わさって好ましい世界が生まれる事を学んで参りました。今茲に本阿弥家の菩提寺本法寺の一隅に、年時の異なる七人の光悦さんが各々の素顔を揃えてくれた事をうれしく思います。光悦好きの皆様にお楽しみ戴けたら幸いに存じます。

後期「如心斎と川上不白」展    11月16日~12月1日

 享保四(1719)年、現在の和歌山県の新宮に生まれた川上不白(宗雪)は、十五歳の時に紀伊藩江戸詰家老 水野忠昭に仕官して、すぐに江戸から京都の茶家、表千家七代 千如心斎の下に茶の湯修業に送り込まれました。以来約十五年の修業の後、江戸に帰任し、水野家の茶頭として活躍し、やがて江戸千家の祖となります。その京都修業時代十五年の間に師如心斎との厳しくも親密な師弟愛はつとに知られています。今回の展覧会にその間の様子を物語る私共伝来の品を並べさせていただきました。表千家不審菴様からは不白が茶の世界に入る機縁を作った主君水野忠昭の手紙を、表千家長生庵様からは如心と不白の関係を如実に物語る『不白筆記』の原本を出陳して戴けました。誠に有り難く存じます。
 又この機会に京都の皆様にあまり知られていない如心斎の迫真の画像を御覧頂けますよう願っております。私は密かにこの展覧期間中に如心斎と不白が久し振りに連れ立ってこの地周辺を散策する様子を夢想しております。
 最後になりますが、今回の記念展の場を御提供下さいました本法寺瀬川貫首様に心より感謝の意を表します。又、貴重な展示作品を御出陳下さった所蔵各位の皆様へ心よりお礼を申し上げます。そして展覧会実現に御協力下さいました関係者各位へも心より感謝の意を申し上げます。 匆々謹言
 令和六年十一月一日

前期 『本阿弥光悦の書(手紙)』展 講演会

◎11月9日(土) 午後1時開演
挨拶        本法寺   瀬川日照貫首
「本阿弥家と本法寺」 立正大学  安中尚史先生
「光悦の書」     書跡研究家 増田 孝先生


瀬川貫首

増田先生

安中先生

後期 『如心斎と川上不白』展 講演会

◎11月23日(土) 午後1時開演
「如心斎と不白」 表千家不審菴文庫 原田茂弘先生
「天然と孤峰」  江戸千家十代家元 川上名心宗匠


原田先生

名心宗匠


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