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2022(令和4)年 孤峰忌

江戸千家 花月の間
十一月四日(金)

 十一月四日、恒例の孤峰忌が江戸千家家元にて執り行われました。
 しめやかな読経の後に家元による供茶点前があり、祥瑞の茶碗に口切りの抹茶が点てられ流祖の像に供えられました。冒頭には炉開きの儀式があり、皆様に披露されました。
 今年の講話は、平櫛田中彫刻美術館館長の平櫛弘子氏による、平櫛田中生誕一五〇年を記念してのお話しでした。
 点心の後広間では口切りの濃茶が、蓮華庵は拝見席とし教場にて口切りの薄茶が振る舞われました。
 前日に新柳様の結婚式があり、道具の取り合わせにも祝意が込められました。流祖を偲ぶ思いに加えて、華やいだ明るい雰囲気の一日でした。
家元による供茶

家元による供茶

呈茶

呈茶

一円庵

一円庵

蓮華庵

蓮華庵

教場

教場

  花月の間 濃茶
床 不白筆三幅対「假 空 中」
  不白塑像 
   前に 不白好 竹 三具足
  花 紅白水引 上臈杜鵑
    野紺菊 秋明菊
 呂宋真壷「南山」不白旧蔵
 供茶 星の奥(口切り茶)
  瀬戸尻張茶入
  祥瑞五良太夫茶碗
  朱色 牙茶杓
脇 国分尼寺経   奈良時代
 炉開
及台子飾り
 皆具 亀紋瑠璃染付
 釜 宝珠釜
呈茶 
 黒棗  川北良造作
 御本 「秋の山」
 茶杓 一元斎「錦」
 御茶 口切り茶「星の奥」
         星野製茶園
 菓子 「空也餅」 銀座空也
  一円庵
床 五月一日経    奈良時代
  銅製経筒     平安時代
  花 薄 秋明菊

  蓮華庵
床 益田鈍翁 扇面  
   万歳〳〵万々歳
  花入 染付 高砂写
 花 ガーベラ カーネーション
   アルストロメリア
   オンシジウム
 釜 阿弥陀堂  琳光院在銘
 水指 高取
 茶碗 武蔵野
 茶器 富貴漆中棗 
 御茶 星の昔    星野園
 菓子 吹寄せ   亀屋伊織

  教 場
床 平櫛田中書 「観」
  丸三方に稲 

「平櫛田中生誕一五〇年」

       平櫛田中彫刻美術館館長
                    平櫛弘子
 明治五年に生まれ百八歳で亡くなった平櫛田中。二〇二二年は生誕一五〇年の節目の年であった。 田中は現在の岡山県井原市に生まれ、大阪で仕事につく傍ら彫刻制作への機縁を得、物づくりへの強い気持ちを抱いて上京、ほぼ独学で木彫の製作に一生を捧げた。
 様々な人との出会いの中、晩年の岡倉天心から強い影響を受けたエピソードを平櫛館長は話された。
 天心は田中に「理想をやってくれ」と言い、田中はその意味を考えあぐねた結果、〝作品を見ると、その人物の背景や行動、気持ちまでが表れ出るような作品。説明ではなく、見る者が想像を広げて補っていく、そういう作品を作る事ではないか〟と考えたという。後に肖像彫刻に携わった際、肖像が関係者の心のよすがになると言われたのも、そこに、天心の言った理想が込められているからではないか、と話された。
 田中が一番好きな作品だった「鏡獅子」の製作エピソード、多くの作品を残したのは、早くに亡くした長男が病床で言った「作品をたくさん作って欲しい」という言葉を大切にしていたから、等々。生活を共にし、誰よりも平櫛田中の作品を理解し、田中の人生を敬愛する館長ならではの、心のこもったお話であった。

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