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第19回 江戸千家全国不白会大分大会

平成30年10月13日~15日
於 大分県別府市・杵築市

杵築城から城下町を臨む

杵築城から城下町を臨む

 平成三十年十月十三日から十五日まで、第十九回江戸千家全国大会が大分の担当で開催された。前回の高知大会から数えて八年ぶり、大分で開かれたのは昭和六十一年の第八回大会以来、実に三十二年ぶりである。
 全国各支部から三百人以上の会員が集い、これ以上望むべくもない好天の三日間を過ごした。
 初日の祝賀会では、竹芸家の生野徳三氏の記念講演があり、人間国宝の父祥雲斎の偉業を紹介、大分不白会会長の挨拶、家元のお話、大分県知事(代理)、杵築市長松永悟様からの祝辞を賜り、鼓の演奏も催され久し振りの再会を懐かしむ盛大な宴となった。
大分不白会曽我会長  翌十四日の杵築市での記念茶会は、曽我会長の指揮のもと、細部に亘って大分不白会会員の綿密な接待がなされ、城下町、そして武家屋敷独特の雰囲気の中での茶会を成功に導いた。各茶席は襖や窓が開け放たれ、青い空、明るい陽差し、風のそよぐ清浄な空気を吸いながら、かつて同じように集い語らい、茶の湯を楽しんだであろう人々の暮らしが直に感じられるようであった。杵築歴史資料館では「杵築に伝わる茶道」と題する関連展示もあり、歴史ある街全体を楽しめる催しとなっていた。
 十五日は、宇佐神宮と国東半島をめぐるコース、別府地獄巡りと臼杵石仏・二王座見学のコースの二つの観光が用意された。

●開会の挨拶

大分不白会会長 曽我 武雪
大分不白会曽我会長  全国よりお集まりの皆様、ようこそ大分へお越し下さいました。
 江戸時代中後期から、大分の杵築藩には流祖川上不白の茶の湯が武家、町人の間で流行しました。中でも藩の医師であった佐野家の方々に代々担われて現代まで継承されています。
 今回、その江戸千家の茶の湯を育んだ杵築の城下町を会場として、記念茶会を催す事になりました。家元には、正にその佐野家で釜を掛けていただくことになりました。大原邸、磯谷邸といった武家屋敷にも大分不白会で茶席を持たせていただきます。中根邸、一松邸でも点心席や紅茶席で皆様をおもてなしさせていただきます。この地での開催は前支部長河北宗節先生の願いであり、家元のお勧めでもありました。
 現在、当地では大分国民文化祭、全国障害者芸術文化祭が開催されています。 杵築市から文化祭期間中の全国大会開催のお話をいただきまして実現の運びとなりました。会場の設営に関しては県の担当者、杵築市永松市長、清末教育長、担当の文化スポーツ振興課の皆様の多大な御協力をいただきました。家元のご指導はじめ、事務局の御助力もあり、ようやくこの日を迎えることができました。心より御礼申し上げます。
 大分不白会会員も、一所懸命準備にいそしみました。何かと不行き届きも多々あろうかと思いますが、お許しをいただいて、この大会がよい思い出になりますよう祈念して、私のご挨拶とさせていただきます。
平成三十年十月十三日 (懇親会当日挨拶)

懇 親 会

 10月13日(土)
 ホテル&リゾーツ別府湾

●記念公演

   「竹 父・祥雲斎の仕事」


                   竹工芸家 生野徳三
生野徳三氏

生野徳三氏

 本日、大分空港より会場までの道中、JRでお越しの方は、九州に入っての車窓から黄金の花の向こうに、竹林の点在する風景が目に入った方も多いかと思います。この時期、春に出た筍は成長を終え、背の高さも胴回りも、これ以上大きくなることはありません。筍を生んだ親竹は、夏の間に古い葉を落し、新しい葉に変わり、衣替えを終えます。 竹が一番美しいこの季節を、俳句の世界では、「竹の春」と呼んでいます。
  己が葉に 月朧なり 竹の春  (与謝蕪村)
 草でもなく木でもない、不可思議なこの植物「竹」は約七百種類、日本には約一割の七十種が繁殖し、細工に適する竹は、六、七種類です。なかでも一番細工に適する「真竹」の竹林面積が、山口県と共にこの大分県が群を抜いて広く、別府温泉という観光地を控えた地場産業として定着いたしました。  扨、私の父、生野祥雲斎は、一九〇四年(明治三十七年)にこの地に生まれ、一九七四年(昭和四十九年)に没しまし た。竹という様々な表情をもつ素材をいかした卓越したその技術を映像でご紹介しましょう。
 (映像鑑賞)
 ところで、江戸千家と私は小学校五年生の時、手習いの先生の縁で出会いました。後年、竹工芸家として日本橋高島屋で個展を開いたときに、家元とお会いしました。大分の研究会開催の折りに我が家にお越し下さるようになり三十年を超えるおつき合いになりました。昭和六十三年六月消印の家元からのお礼の葉書が残っています。
  此君亭 池のほとりの甘茶哉
 私も来年は喜寿、お家元も古希の御祝をなさいました。今後も健康で、五年、十年とこのお付合いができる事を、そして江戸前のお茶が末永く続くことを願っています。 (概略掲載)
永松市長

永松市長

●祝 辞


                   杵築市長  永松 悟 様
 杵築市の城下町は、杵築藩の藩士居住地であった北台・南台の二つの大地と、その間の商人の町とを二十ほどの坂で繋ぐ雄大な景観が、江戸時代の風情を色濃く残しているまちです。その独特な歴史的佇まいが文化庁から高く評価され、昨年十一月「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。
 このような風土の中で、茶道と杵築には深い歴史と縁があります。杵築藩初代藩主の松平英親は寛文年間、今から三百五十年前、江戸幕府四代徳川家綱の時代に宇治茶の種子を杵築地域の馬場尾に撒かせ、三河の国から職人を招いて、お茶の製造方法を取り入れて以来、お茶が杵築の地に広まりました。南台には台の茶屋やお茶の坂、古野地区の臥雲亭などお茶にまつわる名称が数多く残っています。
 来年、流祖川上不白生誕三百年の記念の年を迎えられる江戸千家の皆様には、今後とも日本の伝統的な文化としての茶の湯を次世代に引き継いでいただきますとともに、杵築市で開催される文化振興に対し、引き続きお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
 江戸千家のますますのご発展と川上宗雪家元をはじめ、江戸千家社中の皆様のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。
茶杓の贈呈

大分不白会へ
家元から茶杓の贈呈

鼓と笛の演奏

鼓と笛の演奏

衛藤晃御夫妻

衛藤晃御夫妻

記念茶会

 10月14日(日)
  杵築市城下町
  南台・北台
  佐野家:家元席
  磯矢邸:生野徳三
      衛藤 晃
  大原邸:大分不白会
  中根邸・一松邸
     :点心席・紅茶席

●佐野家  濃茶席 

主 川上宗雪

*佐野家:医家として藩に仕えながら、詩文や書画、あるいは茶道、俳諧の分野においても多くの達人を輩出した家柄。杵築で江戸千家茶道を普及。貴重な文献茶道具資料を伝えた。
家元席寄付

家元席寄付

【会 記】

寄付 能面    室町時代
  「翁」
   本席
床  細川三斎消息
     六蔵つづみのこと
 花入  大鼓おおかわ  桃山時代
      雲華紋 
 花   数珠珊瑚、瑠璃柳 薄
 香合  時代亀甲蒔絵 四方
長板飾り
 釜   瓢型 寒雉作
 風炉  古銅 篭透し
 水指  三斎好 竹手桶
 濃茶器 瀬戸肩付 真如堂手
      銘「千歳ちとせ」 不白箱
 茶碗  奥高麗
 茶杓  千道安作   不白筒
  建水 南蛮写
  蓋置 因久山焼 竹節
 御茶  星の奥  八女星野園
 御菓子 上りようかん 栗入
          半田松華堂
  器  青磁 小鉢
細川三斎の手紙

細川三斎の手紙

家元席床

家元席床

●磯矢邸  薄茶席 

主 生野徳三・衛藤 晃

*磯矢邸:藩主の休息所として設けられた御用屋敷の「楽寿亭」の一部。玄関の間、客間の座敷、茶室の三部屋が残される。各部屋から見る庭の景色に意匠が凝らされている。
衛藤晃氏

衛藤晃氏

生野徳三氏

生野徳三氏

本席 床

本席 床

磯矢邸 寄付

磯矢邸 寄付

【会 記】

寄付
 床  費隠老僧筆
     二行書
本席
 床 石涛筆  竹林の画
  花入  生野祥雲斎作
           文人投入花籠
  花   額紫陽花 薄 薊
      秋明菊 姫蓼
  香合  中国清時代 色硝子合子
  風炉  鉄風炉  大西浄雪作
  釜   四方霰   宮崎寒雉作
   敷瓦 織部
  蓋置  竹節 名心庵好
  水指  備前焼 火替わり
  茶碗  高麗弥平太 銘「忍山」
   替  青釉 土耳古トルコ
   替  黒唐津
   替  安南染付
  薄茶器 菊蒔絵吹雪
  茶杓  万寿寺足利紫山老師
       銘「萬歳」
  御茶  池の白  八女星野園
  御菓子 やせうま 田口菓子舗
   器  青貝象嵌蒔絵
      手付竹盆 生野徳三作

●大原邸  薄茶席 

主 大分不白会

*大原邸:見事な茅葺屋根、美しい回遊式庭園を備える格式の高い家老屋敷。貴重な建築遺産。

●一松邸:点心席・紅茶席

【会 記】

寄付
 床 松村景文筆 枝栗図
本席
 床 不白筆 鶴亀双幅
 花入  生野徳三作 竹一重切
      銘「来也らいや」名心庵朱書
 花   夏臘梅 柘榴
 香合  螺鈿      黒田辰秋作
 風炉先 桑 ガラス嵌め込み
 風炉  唐銅色紙風炉    淨味造
 釜   帯霞筒釜  美乃助作
 水指  朝鮮唐津窯変一重口
             西岡小十作
 茶碗  伊羅保 楠部彌弌作
  替  薩摩焼 菊の絵 
           十四代沈壽官作
  替  黒織部 つるし柿沓形
           加藤光右衛門作
 薄茶器 黒田辰秋作 朱四稜茶器 
 茶杓  名心庵作 銘「国東くにさき」
 建水 竹溜  表完作
 蓋置  丹波 石田陶春作
 御茶  星の昔 八女 星野園
 御菓子 豊のたちばな ざびえる本舗
  器  象彦 


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