平成三十年十一月四日、恒例の孤峰忌が家元邸で行わました。
最初に、仙台国分尼寺の小枝一誠和尚の読経があり、続いて、後嗣博之氏による点前でお抹茶が流祖不白の塑像に供えられました。家元により小箱が載せられた盆が正客の前に置かれ、一二三の趣向で、点前者の評価が行われました。
恒例の講話は、根津美術館学芸員・下村奈穂子先生による「桃山の茶陶」でした。同時期に開催されていた特別展「新・桃山の茶陶」に因んだ内容で、京都三条瀬戸物屋町の遺跡の発掘により大幅に進展した研究の現状について多くのスライドを使って解説いただきました。
日本を代表するやきものの一つである桃山茶陶は、慶長から元和年間に隆盛を極め、信楽・備前・志野・唐津、織部など、形や意匠が多様化し、生産量も爆発的に増加します。その背景には京都の三条通でやきものの生産や販売を担っていた商人たちの存在があったことが、出土した陶片資料の研究により明らかになったという興味深いお話でした。
午後は、花月の間で口切りの濃茶が、蓮華庵では同様の薄茶が振る舞われました。蓮華庵の担当は、東京不白会会長の落合文雪氏。
今年は青森から新潟までの東北方面と東京からの社中で七十人以上の来庵者があり、互いの交流を深めながら、流祖を忍ぶ一日を和やかに楽しまれていました。
■講話 講師:下村奈穂子先生(根津美術館学芸員)
■一円庵 床 不白辞世
下ニ 黄瀬戸香炉
■脇床 蓮々斎筆 不白翁十牛句集
■蓮華庵 澤庵消息
■教場 床 川端玉章 嵐山の紅葉
【会 記】
■一円庵 床 不白辞世 下ニ 黄瀬戸香炉 ■花月の間 濃茶 床 孤峰不白筆三幅対 假 一花五葉開 空 本来是清浄 中 結果自然成 不白塑像 三ツ具足 花 椿(妙蓮寺) 野紺菊 嵯峨菊 供茶 星の奥 (口切り茶) 不白所持 呂宋茶壺 号南山 脇床 蓮々斎筆 不白翁十牛句集 及台子飾り 皆具 梅翁不白好 亀紋瑠璃染付 釜 責紐釜 長野烈造 炉縁 真塗雪輪紋 茶入 瀬戸尻張り 茶碗 奥高麗写 中里重利作 銘 木守 茶杓 十牛茶杓 御茶 星の奥 八女星野製茶園 御菓子 菊時雨 本所越後屋 器 大鉢
■蓮華庵 薄茶 担当落合文雪氏 床 澤庵宗彭の手紙 松茸一籠 云々 花 鳥兜 花入 瓢箪篭 瓢阿作 香合 キンマ 釜 瓢型 寒雉作 風炉 古銅 篭透し 水指 信楽 一重口 茶入 一元斎好 すず虫絵棗 茶碗 左入作 赤黒一双 不白銘 「寒山・拾得」 茶杓 名心庵作 御茶 星の昔(口切り) 星野製茶園 御菓子 吹き寄せ 亀屋伊織 ■教 場 床 中村芳中筆 鹿図 不白賛 黄葉み落て そろ〳〵鹿の 開炉かな 古材長板に 庭の柿実と栗