円成庵 床
本年度の東京茶道会招待茶会は、恒例の通り二月十一日に各流理事により釜が懸けられた。江戸千家家元川上宗雪宗匠は円成庵を担当された。
床の間には奈良時代の空気が漂う。会津八一の曝涼の歌が掛かり、正倉院より出で来たるときの感激が伝わる。
掛け物の下には、可憐な少女像が春日卓に座す。法隆寺五重塔に安置されていた塑像の中の一体で、和銅四(七一二)年であることが知られている。平櫛田中の愛蔵品となり、同美術館に伝わっている。控えめで初々しい姿に引き込まれ、礼拝する気持ちとなる。
寒さ厳しき一日であったが、温かく蒸して出されたえくぼ饅頭、ほどよき熱さのお抹茶に来席者一人一人の心が暖まる。
【会記】
床 法隆寺五重塔 内
女子侍者塑像
平櫛田中彫刻美術館所蔵
春日卓にのせて
掛物 会津八一 曝涼の歌
とほつよの みくらいてきて
くるゝひを
まつの梢に うちあふくかな
花 大和水仙 青竹に入れて
炉辺
香 無銘沈香 黄瀬戸香炉に
釜 芦屋 平 大蓋
水指 常滑 花紋入 室町時代
棗 一閑 菊桐
茶碗 一元 赤 銘 雪あかつき
替 高麗青磁 筒
茶杓 自作 銘 斑鳩《いかるが》
建水 曲
蓋置 竹
御茶 星峰 八女星野園
御菓子 えくぼ饅頭 谷中喜久月
蒸して