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天心忌茶会

平成二十四年 九月二日(日)
 江戸千家家元邸

  平成二十四年九月二日、岡倉天心の命日に行われる天心忌茶会が、池之端の江戸千家家元邸で開催されました。平櫛田中彫刻美術館館長、平櫛京雪氏に報告していただきます。

天心忌茶会に参加して

平櫛京雪

 今年は岡倉天心生誕百五十年、妙高天心茶会も十回目の節目を迎え、特別な思いで準備を進めていた。
 まず、七月十三日、家元、小林忠先生、郡司さん、私とで、天心ゆかりの地を巡った。

献茶

家元による献茶

 日本美術院ではお家元の篠笛の音、美術院の院歌「谷中鴬」が緑陰の霊社にみちあふれた。染井の墓所では般若心経をとなえられ決意を新たにされたご様子。妙高の雄大な山並みを思い浮かべながら、天心が息を引き取られたあの地での茶会の成功をお願いしました。
 しかしながら、突然の事であったが、天心忌茶会は家元邸で行われることになった。「谷中、根津、池之端は天心のお膝元とはいえ、天心の御像が……」と考え、私方美術館の「鶴氅」という銘の天心像を前日車でお連れした。お家元自ら花月の間に据えられ、大観の富士の軸と取り合わせられた。申し分なしであった。後はお家元におまかせした。

脇床

脇床 法隆寺百万塔と陀羅尼経

 当日九月二日は、この季節特有の荒れ模様で、時折バラバラと雨がたたきつけた。海雲和尚、小林忠先生もご参列のもと、お家元が天心に献茶を始められたとき、突然の雷鳴。ぶるっと身震いがした。床の天心先生、ボストン時代の鶴氅という衣服をまとった美の先達は、百五十年後の私達に、何かを問うような視線を投げ掛けていた。

 呈茶、点心の後、午後は、現在「國華」の主幹でいらっしゃる小林忠先生が、「岡倉天心と美術雑誌『國華』」という演題で講演をいただいた。

講演

小林忠先生による講演

「國華」は明治二十二年に岡倉天心により創刊されて以来千四百号を数え、世界最古、最長の月刊の美術雑誌である。天心ゆかりの日本美術院の同人を中心にお話を進められ有意義な時間でした。
 天心に対する追慕の思いで隅々まで整えられた家元邸。終焉の地に勝るとも劣らないお心のこもった天心忌茶会でした。

花月の間床

花月の間床 天心像「鶴氅」と大観筆「不二山図」

鶴 氅 《かくしょう》   岡倉天心像
     平櫛田中作  小平市平櫛田中彫刻美術館蔵

 鶴氅とはもとは鶴の羽毛で作った衣のことを指したが、転じて被布のような仕立で、白地に黒の縁を取った服のことを意味し、隠者などが着たという。この衣裳は親しく交友していたガードナー夫人の夜会のために作らせたのだろう。白いかぶりものをつけ、襟の黒いうちかけのような着物を着ている姿である。陶淵明を意識したと思われる。旧日本美術院時代の機関誌「日本美術」に「鶴氅」と題して載った岡倉天心の写真をヒントに、田中はこの像を制作した。昭和十年頃には原型制作は着手されており、昭和十七年二十九回院展に「鶴氅」(二・一八㍍:国立近代美術館蔵)が出展された。以後「鶴氅試作」(東京芸術大学蔵)、「天心先生」(日本美術院蔵)そして今回の本像「鶴氅」(小平市平櫛田中彫刻美術館像)がある。
                 (平櫛京雪記)

谷中鴬(日本美術院の歌) NHKアーカイブスより
     作詞 岡倉天心  唄 横山大観

  谷中鴬 初音の血に染む紅梅花
     堂々男子は死んでもよい
  奇骨侠骨 開落栄枯はなんのその
     堂々男子は死んでもよい


会 記

花月の間  供茶 呈茶席
 床 大観筆 不二山図
   天心像「鶴氅」 田中作 
            平櫛田中彫刻美術館蔵
    前ニ 不白好
        三ツ具足
        供茶 供菓

  脇床 法隆寺百万塔及陀羅尼経  天平時代
  
  点前座 長板飾り
    風炉 釜 朝鮮切合せ
    不白好
     鳳凰紋染付皆具
    濃茶器 一元斎好
          菊蒔絵棗
    薄器  不白好
          菊 平棗
    茶杓  名心庵作 己等
    茶碗  百碗展 数々
   御茶   星の奥      八女星野園
   御菓子  小萩もち       越後屋
    器   古染 四方 舟の絵
    替   芙蓉手
一円庵
  床 天心の手紙
     黒川真頼宛 國華について
 
 
教 場   点心席
 床 東大寺大佛蓮弁紋様 拓本
    下ニ
     砧青磁香炉
   脇床
    鳥蓋高坏          古墳時代
    人物はにわ         古墳時代
一円庵床

一円庵床

小林先生、平櫛氏、宗雪宗匠氏

宗雪宗匠、平櫛氏、小林先生


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