2011年5月15日
◎繋がっていく力
幸田宗陽(福島不白会)
震災後の無気力の気持ちを、護国寺のお茶会で吹き飛ばされ、帰り道、今日いただいたこのエネルギーを無駄にしてはならない、被災された方をお招きしようと思い、もうこれで終わりと一瞬覚悟したという方をお正客に、職場が罹災し、仕事を失った方をご次客に、家が流された兄弟ご夫婦をこの地に安住させた方を、お三客に、五月十五日、花見の茶会と称して行いました。
朝、亭主役をお願いし、お庭を提供して下さったH様宅へ。前日、ご主人様と共に、駐車場を水洗いし、ソファーをセットしてくださったその位置からは、50アールに植えたばかりの早苗が、揺れる水田を背に樹齢五十年を越えるぼたん桜が、八割方花を落とし、地上には花筵に、水田には花筏にと装い、その周りには藤、つつじ、あやめ等々、花の歓迎を感じました。
今日は、初座:料理は美しく盛ること、華やかに。後座:濃茶はたっぷりと少し薄めに、寂に。
そしてお客様にまた来たいと思える様、心を込めてお接待することを確認してはじめました。
招く側は一人一品を一皿に美しく盛ること。
お客様には取り皿に、一品ずつ美しく取り回すことをお願いしました。
隣の人の盛りつけを見比べながら真剣に悩む姿をほほえましく思えました。お話はやはり料理の材料、作り方に関心が集まり、三客お持たせの早池峰山麓白ワインをいただきながら盛り上がりました。
深見草の主菓子をお出しして中立ちへ。
高桐院を訪ねた時、お願いした記念の扇面。剛山書、「柳緑花紅」をお軸に、村上市の九重園、うきふねを二寸小棗に入れ、包服紗にして盆に飾り、濃茶を点てました。
約束通り、絵唐津の円相の茶碗にたっぷりと少し薄めのお茶をお出しすることができました。
お薄が終わる頃、残された二割の桜の花びらが天から風に誘われて舞い散りました。歓声をあげ「さようなら、又、来年まで、ごきげんよう」と言われているよう、と言い合いました。つられて見上げた空は五月晴れ、絹のような薄雲が鶴を形どって北に向かって飛んでおりました。
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