2010年2月28日
南半球でのお茶会–ニュージーランドのジャパンデーに参加して–
伊藤俊彦(八女不白会)
まだまだ寒い二月末、知人に誘われてニュージーランドへのツアーに参加した。
このツアーは福岡文化連盟(理事長:多田昭重西日本新聞社会長)を中心に、オークランド市のジャパンデーに参加することを目的としたもので、企画書には現地の日本人会がニュージーランド国民に日本の伝統芸能、文化、武道を紹介する催しで、華道、書道、邦楽、柔剣道等を展示または演武するとあった。
茶道がなかったので、できれば少人数の方にでもお抹茶を振る舞うことができればと思い、トランクの片隅に茶籠と干菓子を忍ばせ、はるか九千キロのかなたまで飛んだ。
現地は夏から秋への一番いい季節である。
まず、前夜祭が総領事公邸で行われ日本全国からの参加者や日本人会の皆さん百人近くが公邸内や広い芝生の庭でのビュッフェパーティーに出席し、料理とワインにいい気持ちになりながら、やがて夜空に瞬き始めた初めての南十字星に感激した。
二月二十八日ジャパンデーの当日、大変広い会場の一隅に「茶道 Tea Ceremony」と書かれたコーナーが設けられており、お願いしていた電気ポットとボールがテーブルにセットされていたので即席のお茶席を準備した。
和太鼓で始まった開会式には首相を始め市長、日本総領事他たくさんの名士が出席し、福岡から参加の新池坊の皆さんによる生け花の実演も行われ、会がスタートした。私は同行した妻を半東にサービスを開始した。
ニュージーランドは多民族国家であり、白人はもとより、アジア系、中近東系そして南方系と、いろんな国の人々がテーブルの前に人だかりとなり、次から次に椅子に座るため、休む間もなく茶を点て続けた。
茶籠から茶碗、茶入を出し、竹筒から茶筌、茶杓を取り出すと、「オー!」という驚きの声が沸き、お抹茶を取り出すと「イッツ ワサビ?」と、とんでもない質問。「ジス イズ ティーパウダー」と、一夜漬けの英語で説明をしたりで、一缶の抹茶で実に五十人以上の皆さんに日本のお抹茶を振る舞うことができた。
思いもかけぬ南半球でのお茶会となり、総領事や日本人会の方々はもとより来場のニュージーランドの皆さんにお茶を楽しんでもらえたことが私にとって大きな喜びであったとともに、かくも多くの人が茶道に興味を持っていたことは貴重な体験であり、今後もずっとお茶のお稽古を続けたいと思った。
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