江戸千家 >  不白会だより > 2024年 > 5月

2024年5月12日

山形不白会恒例茶会

児玉宗純(山形不白会)

 山形不白会の恒例茶会は五月十二日、山形市の山寺芭蕉記念館を全館お借りして、本席、立礼席、点心席の三席を設け執り行われました。私は、本席を担当いたしました。
 本席の観宝亭からは新緑の山寺が一望でき、時折爽やかな風が吹き込む穏やかな日で、百五十名のお客様をお迎えいたしました。
 今年で七十七回目を迎えたこの会は、昨年長井市から山形市に会場を移し、新たなお客様との出会いに支えられております。江戸千家を知っていただくために、流祖川上不白の功績やエピソードをお話しいたしました。独特な美的感覚、遊び心あふれるお稽古のこと等々......。お客様がうなずかれると嬉しい気持ちになりました。
 設えは、景観との一体感を考え「天の川」席にし、オリジナルの菓子「あやめ草」と八女の抹茶を差し上げましたところ、美味しいとおっしゃっていただきホッと致しました。また、お庭から聞こえる二胡の音色もこの席には心地よく、思いを込めたお道具に皆さん見入っておられたのが印象的です。
 少人数でのおもてなしでしたが、協力しあってできましたこと誇りに思いました。 

カテゴリー:行事・茶会 「山形不白会恒例茶会」のリンク

2024年5月1日

長野家元招請研究会

家元招請研究会〈課題:茶通箱〉

大場宗絵(長野不白会)

○霧雨の菱野温泉にて行われました。午前中の講義では、「茶通箱とは二種のお茶を飲み比べるための作法、その本来の趣向を忘れてはならない」とご教授いただきました。
 午後の実践の冒頭に、家元は「皆さんには目を閉じて五感で点前を捉えることをお勧めしています」と話されました。釜の煮える音と雨垂れが縁側の庇に落ちる音を聞きながら点前の進行を心中で辿っていると、とても心地よく豊かな気持ちになりました。しかし想像での手運びが迷子になると、お点前を見ておかなければという気持ちから、ご亭主の動きに見入っておりました。茶通箱の点前は本来の趣向のためにあるとの家元のお言葉の通り、二種のお茶の味と香り、茶碗に残った景色までも堪能することができました。
 茶通箱は手数が多く大変だという先入観があったのですが、「茶通箱」に親近感を持ち、楽しみながら学ぶことができました。

御堂島良子(長野不白会)

○家元による講義の冒頭に紹介された『不白筆記』掲載の「茶通箱」について、帰宅後熟読しました。 「箱三様」の中で、茶通箱は第一にお抹茶を贈るための運搬用具であったこと。第二に良いお茶を後座までの間、濃茶器に入れて水屋の棚に保管しておく際の陰の入れ物であったこと。そして第三は、二種類のお茶の飲み比べを楽しむため、お点前用の表道具になったこと。「濃茶二種点前」は、箱なしで実施してもよいことを知りました。
 家元の「飲み物としてのお抹茶が本当に好きかどうか。これが一番大事な根底であり、お点前は手段」との言葉をお聞きし目から鱗の思いでした。

カテゴリー:研究会/家元招請研究会 「長野家元招請研究会」のリンク