2008年12月28日
暮の一日 —恩師に感謝する至福のとき—
伊藤俊彦(八女不白会)
暮も押し詰まった十二月二十八日、社中の有志七名が研究会の名目で、群鶴庵に集まった。
花を持ってくる者、得意の料理を持参した者等、思い思いにやってきて、いつものごとく準備をする。
さて、何をするか……花所望、且座、相伝物等の案も出たが、結局廻り炭をすることとなり、折据で順番が決まった。久しぶりの廻り炭をしながら、亡き恩師がよく稽古をして下さった思い出を語っているうちに炭が入った。
昼時になり、料理自慢の手作りの品々に京都土産の粉で練ったソバ掻きと甘酒がついた質素ながら心のこもった素敵な味を楽しんだ。
食事の後、唐物によるお濃茶となった。良く練られたお濃茶の美味しさに思わず「うまかあー」の声が!
お濃茶がまわり、さらにお薄茶をいただき豊かな時間が静かに流れるその雰囲気を心ゆくまで味わいながら、亡き恩師あったればこそ、この至福のひと時を経験できる幸せを感じた一日であった。
「感謝」。
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2008年11月23日
「名物飾り」「花入飾り」
宗康先生招請研究会−【小習十三箇条】
保坂宗早(甲府不白会)
先ず、盆と茶入。全体を拝見
濃茶器の扱いを学ぶ
美しく雪化粧した富士山の見える県立芸術の森素心庵に、十一月二十三日、宗康先生をお迎えして研究会が行われました。課題は、小習十三箇条のうち、「名物飾り」「花入飾り」です。
「名物飾り」では、貴重な茶入に対して敬意を表しながらの扱い方、拝見の仕方を教えていただきました。
「花入飾り」は、あくまでも花入を主役とする趣向であることを教えていただきました。普段は、花が主役で、その時の花に合わせて花入を決めるようにいくつかを用意するのが本来の姿であることも改めて知りました。学ぶことがまだまだあることを実感しました。
甲府不白会は、少人数の上に、当日の事情で参加出来ない方もいましたが、「かえって充実した稽古が出来ます」と宗康先生に言っていただき、皆熱心に取り組んでいました。
全員参加の有意義な一日でした。
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2008年11月16日
「軸飾り」「花入飾り」について
宗康先生招請研究会−【小習十三箇條】
吉村宗千(福岡不白会)
「軸飾り」とは、初座においてお席入りの後、お客様の前で軸をかけ、見ていただくという普段とは異なる飾り方で、「御宸翰」「名物「拝領物」等を扱う際のもの。軸の取り扱い方、飾り方(床にかける)、各部の名称等、若い方に実際にしていただき、基本から丁寧にご指導いただきました。
お客様をお招きして、「軸飾り」を行いますと、いろいろとお尋ねができ、その上に会話も弾み、一層楽しいお茶事になることと思いました。
午後の課題は、「花入飾り」と「花所望」でした。初座において、床に水を入れずに花入を飾る。「花入」は、拝領物や名物を用い、名品の良さを鑑賞していただく。後座は花所望の席となり、正客に花を活けていただくという手順です。工夫により現在でも生きた趣向になるのではと思いました。意義深い研究会となりました。
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初の亭主雑感 —月を心に映して—
家元招請研究会−【茶会の実践】
宮迫宗勇(新潟不白会)
新潟特有のどんよりとした時雨模様の中、「茶の湯実践」が六席に分かれて行われました。
同じく茶の湯を学ぶ家内は席を持ったことがありましたが、私が席主を務めるのは今回が初めて。お茶では私は家内の付き添いのつもり、何故私が……。心の準備ができていない状態で、いよいよ当日〈まさか〉が現実になってしまいました。
お家元には、何の風情もなくありのままの姿を見ていただくしかありません。一歳の誕生日を迎えたばかりの初孫の声や我が家の一員である犬の声、そんな環境の中で緊張と不慣れなお茶席にもかかわらず、温かく和やかなそして楽しい雰囲気をかもし出していただき、気配りのこもったご指導をいただきました。同席の皆様はもちろん、未熟な私を裏方で懸命に支えて下さった半東さん、そして家族に改めて感謝しております。
良寛の「茶之賛」の一節に「……其の味たる、高古、淡雅、幽邃、清和なり……」とあります。そんな一服をお出しすることの難しさを再認識すると同時に、心に染み入る一期一会の重みを日増しに感じております。
十二月一日、澄んだ夜空に三日月と金星、木星が優しく微笑み輝いておりました。この度頂戴致しましたのは家元の「月」の色紙。「自らは光を持たないけれども、己を知る謙虚さ、誠実さに見るひとが感化される存在」。「月」を見る度思い出すことと思います。
凛とした茶事の心構えを忘れず、気軽にお茶を友として語らう、そんな日常の茶の湯を家内共々楽しんで行けたらと思っております。
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2008年10月19日
茶の湯を生活のなかに…研究会に改めて思う
家元招請研究会−【茶会の実践】
飯田宗美(須坂同好会)
茶会の亭主を務めた思い出に
茶会後の報告会では、各席の報告から多くを学ぶことができる
里の木々も色付き始めた十月十九日、お家元にご出座いただき本年の課題である「茶会の実践」の研究会が行われました。
午前中は、三名の席主宅へ、それぞれお招きいただき、午後は一堂に集い、部屋のしつらえのこと、心尽くしの料理のことなど、迎える側の工夫あり、苦心ありの様子や、客側の楽しく過ごした様子などが、充実感、達成感も交え、語られました。
お家元からは、これを機に、折々実践を重ねてとのお話をいただきました。
席主は、お家元直筆の色紙を頂戴し、喜びと共に、新たなる目標を広げたことと思います。
実践の研究会は、会を重ねる毎に、お茶事の楽しさや、日常生活に自然な形でお茶を取り入れていけたらとの思いを一層強くいたします。
また、どのような疑問や迷いに対しても、耳を傾け、一つ一つ丁寧にお答え下さり、お家元からこまやかなご指導を直接賜る幸せを感じ、お茶を続けて来たご褒美かもしれないと思えた研究会でした。
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2008年10月13日
ご相伝をいただいて
近村和子(青森不白会)
むかしご一緒した先生にお会いするたび「お茶を飲みに来て」と声を掛けられ、友達とお稽古を始めました。これが江戸千家の茶の湯との出会いでした。稽古は楽しく、また、日常の慌ただしさを忘れられる安らぎのひと時でした。おいしいお茶を飲むことを幸せに感じる日々でした。でも先生のご病気で一時お稽古を休みました。
お茶をじっくり味わいたいと思い、木立先生のもとで、お稽古を始めることにしました。楽しい中にも厳しいご指導、そしてみなさんと過ごすなごやかなひと時。明日への励みとなる時間でした。
秋晴れの十月十三日、最初のご相伝として「入門・茶通箱」をいただくことになりました。いつもとは違った緊張感でお席入りしました。お床の「寿」の掛け物、お花、すばらしいお道具。先生の心のこもったお点前を拝見していると、少しずつ気持ちも落ち着き、穏やかな思いになりました。
「祝の白」という銘のお茶、格別な香りでまろやかなお味でした。続いて「茶通箱」のお点前では、「星の奥」というお茶を特別おいしくいただきました。茶通箱を用いる茶の意味をうかがい、先人のお茶を大切にする心が理解できた気がします。
式典の後、お茶室でお正客の薄茶をおいしくいただきながら、お軸のこと、お道具のこと、話しが弾み、終始和やかに充実した一日でした。
先生、お正客、お詰の方々のご苦労により、こうしてご相伝をいただくことができまして感謝の気持ちで一杯です。これからも忙しい毎日の生活の中ですが、茶の湯を楽しんでいきたいと思います。
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2008年10月5日
実践したからこそ分かること
家元招請研究会−【茶会の実践】
今井光雪(熊谷不白会)
この日行われた、別会場の床の間
私の家では、お家元をお迎えすることになりました。
支部長先生にご指導をいただきながら、掛物、寄付、点心等を一つずつ調えていくうちに目鼻もついてきて、少しずつ考えることが楽しくなってきました。お客様をお迎えするのが好きな両親は、全面協力体制です。社中も「またとない勉強ができて嬉しい」と喜んで手伝ってくれました。
当日は、お家元を正客に、くじ引きで決まった三名の方をお迎えしてのお席です。十三夜が間近でしたので、点心に鶉のゆで卵の黄身の小さなお月様を添えました。「十五夜は芋名月、十三夜は栗名月ですよ」というお菓子屋さんの助言で用意した焼き栗のお菓子は好評で、ほっといたしました。お茶は和韻点てを差し上げましたが、終了後「量はもう少しタップリの方がよかったですね」とお家元からご指導をいただきました。
稽古の時は、交替で何服もいただくので、一服を少な目に点てていたことに気付き、稽古と実際の違いを実感いたしました。
席主を務めた四人に、記念の色紙授与
反省会は参加者全員が集まり、食事をしながら和やかに進みました。お家元からも、実践をしたからこそのご指導をいただくことができ、大変有意義な時間となりました。
私は「風」の色紙をいただきました。風の爽やかな季節になりましたら、いただいた色紙を掛けてお茶事をしたいと思っています。
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軸飾り、花入飾りから学ぶ
宗康先生招請研究会−【小習十三箇條から】
神岡春雪(高田不白会)
十月五日に宗康先生をお迎えして、軸飾り並びに花入飾りの研究会が行われました。
日常では何気なく床にお軸を掛けておりましたが、軸飾りは名物軸、宸翰、特別に意味ある軸の時に行う趣向で、正客の所望によって、掛けてお見せするものであること。その目的と軸の掛けおろし、巻き方などのご指導をいただきました。重きものであれば自然に丁寧に扱うことが必要になるのではと感じました。軸飾りに限らず、日常でも掛物を掛ける準備を面倒がらず、気持ちを集中させる時間であるという教えを改めて認識いたしました。
花入飾りの研究会では、名物花入を披露する特別の趣向であることを学びつつ、日常では、花入を先に決めがちですが、花入よりも花が主であること、この花にどの花入がよいか組み合わせを考える、ことが大切であることもお話下さいまして、大変よい勉強をさせていただきました。
軸の扱い方を指導
花入飾りの実技
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準備の工夫を楽しむ
家元招請研究会−【茶会の実践】
田中宗恵(熊谷不白会)
茶会で意気投合、記念写真
四名が席主を担当する研究会で、私も初めての茶事ですが、引き受けることにしました。
母屋の内や外、庭木、茶室周り、懐石献立、道具組等々の準備、あれもこれもとパニック状態になるほどでした。これではいけないと、家元教場研究会で学んだことを思い起こし、また支部長先生の温かい励ましや助言に後押しされて、気持ちもだいぶ和んでまいりました。
まず、母屋の和室を寄付にし、入口には木製の手作りの踏み台が完成。庭木の手入れ、つくばい、茶室周囲の清掃は主人が一手に引き受けてくれました。
悩んでいた献立も決まり、以前東北旅行に行ったとき求めたとんぶりを使って工夫した一品、家庭菜園の野菜も仲間入り、海のもの、山のものも決まりました。床の軸や花など、やつれ風炉の灰も完成、次々と整ってくると不思議なもので冷静さを取り戻すことができました。
いよいよわが家でのお茶事開始です。到着したお客様の案内、露地などへの水打ち役、寄付や半東役等、社中一致団結してのおもてなしが始まりました。若い支部会員四名をお迎えしました。互いに初対面でありましたがすぐに気持ちもほぐれ、会話もはずみ、まさに一座建立、楽しい時を過ごすことが出来ました。
最後の報告会で亭主四人がお家元より色紙をいただきます。私は「花」でした。これを励みにこれからも精進していきたいと思います。
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2008年9月26日
坂本繁二郎画伯生家修復チャリティー茶会
田中宗芳(久留米不白会)
試行錯誤の舞台設営・多くの来場者で賑わう
前日まで降り続いた雨も止み,早朝から日が差し始めた九月二十六日、久留米市六ツ門町の六角堂広場に於いて坂本繁二郎画伯生家修復チャリティー茶会を催しました。広場での茶会ははじめてのことで、ステージでの点前の方法、客席をどうするか、舞台装置の設営など試行錯誤の末、当日を迎えました。
久留米が生んだ近代洋画家の巨匠坂本繁二郎画伯は、明治十五年久留米藩士の子として京町に生まれました。生家は江戸時代後期から明治初期にかけて建てられた久留米に唯一残る武家屋敷で、市の指定文化財(建造物)となっています。しかし経年の腐朽や蟻害等で危険な状態となったため、久留米市文化観光部文化財保護課によって、保存整備事業が実施されています。
坂本繁二郎画伯の奥様、宗薫先生は、昭和二十五年創立江戸千家九州支部初代支部長として長年に亘りご活躍された方です。物静かな温和なお人柄で、支部の発展に尽くされ、千余名の会員を擁する大きな支部となりました。
坂本画伯は昭和六年にアトリエを八女市に移されたため、八女、佐賀、福岡と、江戸千家の茶の湯は広まり九州支部は大きくなっていきました。現在アトリエは久留米市文化センターに移築されています。
生家の修復は平成二十二年春の完成を目指し、茶室、野点等でも使用出来る施設となるそうです。
幸い、茶会当日は八女、佐賀の両不白会から、また他流の方々や地元の商店街の皆さんも、大勢訪れてくれました。盛会のうちに坂本繁二郎画伯、宗薫先生のご遺徳を忍びながらの一日を終えました。
十月二日、この日の収益金が西村会長から久留米市長へ手渡しされ、修復への願いをお届けしました。
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2008年9月3日
茶の湯から拡がる好奇心
下津浦靖雪(久留米不白会)
林原美術館のお茶室前で記念写真
私がお茶を習始めの二十三年前は、道具の名前や、お茶を点てる順序を覚えることで精一杯でした。でも、慣れてくると、稽古や、お茶会だけでなく、歴史上の人物を知り、史跡、名跡、美術館を巡ったりなど、楽しみが色々増えてきました。
今年、七月のことですが、先生、友人達四人で、岡山に行ってきました。最初に行った林原美術館では、桃山時代の古備前、白磁に似せた白備前、色を施した彩色備前などを見て、こんなにも沢山の種類があるのかと、ただ驚くばかりでした。中でも「白備前獅子牡丹香炉」や、「絵備前」の、大皿、小皿などは、今でも目の前に浮かんでくるほど印象に残っています。
昼食は珍しいことに、後楽園の中にある料亭でした。ここは岡山城家老の、伊木三猿斎様のお邸跡とのことで、玄関に足を踏み入れると、何故か、懐かしさを覚えゆかしい雰囲気に満たされていました。
美味しい懐石料理に舌鼓をうったあと、つぎに訪ねたのは、日本で一番古い学校として有名な閑谷学校です。農民の子供達にも学問の場をと、藩主、光政公が、孔子廟をモデルに建てた学校とのこと。その広く静かな敷地に佇んでいると、大昔に学んでいた子供たちのかわいい声が、私の耳に、聞こえてくるような気がしました。本当に盛り沢山な有意義な一日。是非また、この様な新しい愉しみを見つけて、知識を拡げたいと思っています。
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2008年8月24日
招く事で学べる
家元招請研究会−【茶の湯実践】
石井良子(福島不白会)
研究を重ねた点心
家元招請「茶の湯実践」研究会が八月二十四日、福島不白会で行われました。九名の席主からとお正客の感想を発表いたしました。
私も岩谷前支部長から「今年の課題は茶の湯実践だからとても勉強になるので席主をしてみたら」と声をかけられまして「はい」と受けてはみたものの、茶事についての経験はなく、どのように進めるかもわからないまま七月三十日十時から行う事にしました。茶道具が揃っているか調べたり、点心については手作りでもてなしたいと思い、料理本を参考にしつつ準備いたしました。
当日床には中国寒山寺で求めた「日々是好日」を掛けまして、社中の先生方五名をお迎えしました。お正客から詰の方まで四名と一名は水屋を担当していただき、戸惑いながらも先生方のご指導を受けながら、なごやかに進める事ができました。
はじめて席主を務めまして、茶の湯の奥深さを知る事ができましたことと、箱の中に眠っていた茶道具の出番があり、初のお披露目となりましたこと、とてもよかったと思います。これからも機会をつくり茶の湯を楽しみたいと思います。
この日行われた別会場の茶会-庭での立礼席
家元の色紙を掲げる席主の皆さん
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2008年8月1日
灯篭茶会
白井宗節(福島不白会)
幻想的な灯篭が池に浮かぶ
今年も八月一日から三日間、白河茶道連盟主催の灯篭茶会が開催されました。
江戸千家福島不白会は二日目を担当いたしました。
南湖公園内日本庭園の池に灯篭を浮かべ、路地の通路には蝋燭が灯されて、幻想的な雰囲気を醸し出しました。
地域の茶道に尽力された物故者に黙祷を捧げてから、供養の茶席となり、経筒に古代蓮を入れ、長板、平水指、男性のお点前で薄茶を差しあげました。
親子で夕涼みを兼ねたり、外国の方がゆかた姿でおいでになったり、インターネットで知ったと、新幹線を利用して来てくれた方もありました。暑い日でしたが、夜の茶会を満喫して下さったのではないかと思います。
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2008年7月27日
朝取りの庭の野菜でおもてなし
家元招請研究会−【茶の湯実践】
遠藤柊雪(高田不白会)
採れたての野菜を使った点心
さる七月二十七日、まるで蒸し風呂のような暑さ、炎暑の中、家元招請研究会を致しました。
私もお招きする事になり、初めての経験ですので少々不安でしたが、ある物でおもてなしをと心に決めました。しかしお客様をお迎えするまでの仕度の大切さ、大変さを改めて知り、勉強不足が悔やまれました。お客様はお家元随行の郡司様をお正客に、あと三名の方でした。茶事が始まり、一瞬の緊張もとけ、終始和やかにお話が尽きない一会となりました。
茶事のあとの記念写真
一献には、朝取りの野菜を添え、中立ちの後、お茶箱でお薄を一服差しあげるというきわめて粗末な席でした。茶事の後、裏の畑を案内すると、キュウリの花、料理に用いた未だ熟さない小さな小さなキュウリ、ナス、茗荷等を珍しそうにしていらしたので、朝取りの残りのお野菜を紙袋に入れて差しあげました。
後日、東京で洋風の味付けにして召し上がったとうかがい、とても嬉しかったです。お茶事を通してお茶以外にも和が広がる喜びを感じました。そして反省会にはいろいろな茶席の様子をお聞きした後、お家元から「和」の色紙をいただき、よい思い出の初体験でした。
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2008年7月22日
茶事は一人でするものではない
家元招請研究会−【茶の湯実践】
小田島 宗寂(岩手不白会)
亡父上所蔵の掛け軸が茶事を見守る
わが家において初めての茶事、それは実に慎ましいものだったと思います。しかしそれが私にとって特別なものとなったのは、正客にお家元をお招きすることとなったからでした。
それまで仕事の多忙を理由に研究会での茶事の実践は辞退し続けてきたのですが、いよいよ仕事の都合もつき、お客様をお迎えするお役に付くことができました。今回は点心も控えめでよいということで、比較的心安く引き受けさせていただけたように思います。それから暫く後、正客にはお家元が決まったとの知らせを受けました。その時の私はまるで宝くじに当たったかのような心境でした。辺りの方々の心配を他所に、私は内心喜びでいっぱいだったのです。「何時かはお迎えしたいと思っていたお家元に、こんなに早くいらしていただけるなんて! しかも初めての茶事で」
今回亭主として役の重さをひしひしと胸に刻みながらも、決して気負うことなく自分にできる限りのことを心を込めてやってゆこうと思いました。急にそうそう立派なことはできません。先ずはお家元をはじめ、いらしていただくお客様に、寛いでゆったりとした時間を楽しんでいただけるようにと心がけました。
特に変わった趣向は設けなかったのですが、七月の暑い盛り、いかに涼やかに過ごしていただくかと思案しました。当日は朝のうち雨に見舞われたものの、幸いにも酷暑は免れたので、茶室の窓はすべて開け放って自然の風や野鳥の声が入るようにしました。わが家は比較的長閑な場所にあって、裏手には小山が臨めるのです。都会からいらしたお家元にも楽しんでいただければとの思いもありました。また、この土地ならではのおもてなしをしたく、点心の食材等は可能な限り県内産の新鮮なものを使用しました。
名残を惜しみ記念写真 緊張のあまり、ちょっとピンボケ?
この日の軸はお家元の筆による『無門』。私の父が生前にお家元から賜ったものです。私の父もまたお家元にわが家を訪れていただきたいと願った一人でした。存命中には叶いませんでしたが、この日お客様のほぼすべての方が父を存じていて下さり、有り難いことにそれぞれの方から思い出話をいただきました。その場に姿はなくても、さぞや満足であったろうと思います。私も茶杓の銘「おとずれ」に想いを込め、密かに父とともに喜びを分かち合いました。
点心、茶席ともお客様全員が程よく会話に加わり、終始和やかにひとときを過ごすことができました。堅苦しくなく、楽しい席にしたいという願いを皆様がかなえて下さったのです。
誰よりも私自身が一番楽しませていただいたのではないでしょうか。研究会の課題として行われた茶事ですので残念ながら時間に限りがあります。できることならずっとこの時が続いてくれはしないかと心の中で願って止みませんでした。まだ何かお客様にして差しあげられることがあるはずなのにと。茶席への名残惜しさを身をもって初めて実感した日でもありました。
茶事の実際に際して、私は様々な事を学んだように想います。準備は苦労な反面、実にわくわくする過程であること。私のために惜しみなく助言下さった先生方、快く役を引き受け強力にサポートしてくださった半東さん、家の清掃と食材の調達や調理に協力してくれた家族、そして一緒に茶事のひと時を過ごしてくださったお客様……、茶事は一人でするものではない、沢山の方々の『和』が集まってでき上がる芸術作品なのだということ。実践して初めて得心できることだと感じました。
このような素晴らしい機会を与えていただき、大変感謝しております。
この日行われた別会場の茶席 三田会長もご亭主として活躍
笑いの絶えない反省会の様子
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2008年7月13日
客となって学ぶ
家元招請研究会−【茶事の見本】
山本文雪(静岡不白会)
一献で気持ちも和む
当支部の研究会は七月十三日、サールナートホール不二庵にお家元をお招きし行われました。静岡市内はお盆の時期でもあり、家を空けることもできない方もおられ、少人数となりましたが、有意義な一日となりました。
今回は東をお家元にお引き受けいただき、半東、水屋、そして客三名とのことで、私は末客として御席に連ならせていただきました。
緊張して入ったお席でしたが、支部長先生のお心尽くしの御膳が運ばれ、一献いただく頃には、床に掛けられた流祖由縁の瀧自画賛の御軸から那智の瀧へと話は進み、和やかな空気に満ちていました。
床の掛け物は、不白筆「瀧画讃」
中立後いただいた和韻点てのお茶の美味しかったこと、まさに至福の一刻の風情です。このひとときを生みだすため、東は勿論、半東、水屋の方まで皆様のこまやかな心遣いが伝わってまいります。前回何もわからず席を持たせていただいた私とは雲泥の差を感じ、これからの課題を突きつけられた思いです。
これからも研鑽し、いつの日か皆様をお招きできたらと夢見ています。
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2008年7月6日
演出と楽しみの世界
宗康先生招請研究会−【小習十三ヶ條--軸飾り、花入飾り】
七戸不白会
稽古ではなく工夫する大切さを解説
掛け軸の扱いを学ぶ
七月六日、七戸不白会では、宗康先生を招請し、研究会が行われました。課題は、「軸飾り」と「花入飾り」で、ともに小習十三ヶ條に組み入れられています。
軸飾りでは、まず、掛け軸の扱い方についての基本実践が行われ、また、掛け軸の部分名称、材質、役割等の解説をいただきました。
軸飾りも花入飾りも、茶事の趣向として古くから自由に行われていたものが、江戸時代後半期より稽古事として行うため型にはめられ、そのおかげで、今日まで型の稽古として継続されているとの事です。これらの趣向を理解するためには、基本を修得した上で実際の茶事において、自分のやり方で自在にしてみると楽しいし、現在でも生きた趣向となるのでは、というお話がありました。
小習十三ヶ條は実は、型の稽古ではなく、工夫と演出と楽しみの世界であったことが分かることになるのかも知れません。
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2008年6月26日
茶の湯体験セミナー
西村宗櫛(ロサンゼルス不白会)
お抹茶、good!
六月二十六日、サンタモニカ市立図書館にて、japanese culture festivalで日本文化の紹介をするプログラムがあり、茶の湯体験セミナーと称して参加しました。
ちょうど、京都宮川町の芸舞妓、小桃様とお母様の小糸様がお見えになっていましたので、一緒に茶会もいたしました。
アメリカは六月末から夏休みに入っていますので、大勢の人の参加があり、皆様楽しんで茶の湯を体験してくれていたようです。
熱心で楽しそうな指導風景
日本の風情に興味津々
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2008年6月15日
宗匠をお迎えして
家元招請研究会−【茶の湯の実践】
中野梅雪(大分不白会)
茶事の後の記念写真
梅雨もはしりの六月十五日、家元招請研究会は、かねてより計画のありました各地区に分かれて行われる茶事の実践でした。
大分支部は都合により、今回が初めての実践でしたので、宗匠には何かとご心配をいただきましたが、皆それぞれに覚悟を決めて、お役をいただきました。
私方には、宗匠他二名のお客様をお迎えすることになり、当番はもとより社中を上げて準備の段階から取り組みました。何とも急のことでしたので、いざお受けしてみると、家の外も内も気になる所ばかり。たまたま近所の方が、庭木の剪定はどうかと立ち寄り、事情を話しますと、早速自分の裏山から竹を切ってきて、くぐり戸の屋根や垣根を取り換えて下さり、本職でないのでできあがりは程々でしたが、本当に有り難いことでした。
さて、畳も新しい方がよいと、この際替えることになり、お稽古日は専ら大掃除、雨のことも考えて蹲は内と外に準備、火入れの灰形等日頃やらないことが急に現実となって、皆さん大変でしたがよい勉強をさせていただきました。
研究会とはいえ、何の趣向もないわが家、到着までの道中を、大分の市街が木の間隠れに眺められる美術館へと通じる森の中を、露地として通っていただきましたが、当日は生憎の梅雨空、展望はきかず、せめて和の香りでと玄関にお香を焚いてお待ちしました。
まず待合に、そこで先輩から譲り受けた恩師佐野宗秀先生のお写真に目を止めていただき、本当に嬉しく思いました。
お席入り、心ばかりの点心は、地産地消をモットーに、国東半島の蛸の向付、別府湾の太刀魚の八寸、野菜は当番の方の菜園から。又夜の会食を美味しく召し上がっていただけるよう、軽めの碗盛は七夕「天の川」仕立に、星形や短冊など作る楽しさも存分に取り入れました。
後座のお濃茶は私が務めさせていただきましたが不加減なできで、申し訳なく反省しきりです。続き薄茶は代点で、半東、水屋共よく頑張り、緊張の中、時間はあっという間に過ぎてしまいました。
五組に分かれたお茶事が無事終わり、全員別府に集合して、それぞれ亭主のおもてなしの様子、客となって感じたことなど、思い入れの報告があり、なごやかな茶事の様子が手に取るように想い描かれる報告会となりました。
当日掛けました「不立文字」の軸、文字や言葉によるのではなく、ひたすら自己のうちに向かって究明し、以心伝心、宗匠の心を心として、道は遠いですが、これからも茶の道に精進したいと想います。
後日宮崎よりの遠来の客を交えて、跡見の茶事を行いました。
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2008年6月1日
力の入ったはじめての茶杓削り
宗康先生招請研究会−【茶杓削り】
小川宗美(新潟不白会)
かい先の削り方を熱心に見る
宗康先生をお迎えしての茶杓作りは、とても楽しい講習会でした。
茶の湯という日本文化の中で竹が素材となり形作られたものは沢山あると思います。その一つが茶杓です。茶杓や茶筅なくしてお茶を点てることはできません。
宗康先生より手順のご説明の後、いよいよ作業開始です。まず、かい先を作るための竹をローソクの炎で加熱し冷水中で一気にカーブ。折れる寸前までの力加減は難しく慎重になります。次に節を境に削るのですが、宗康先生の「そんな削り方じゃ駄目だよ!!」の声が私の手元に向けられているとは露知らず、ひたすら寡黙に削っておりました。一本の竹は、宗康先生の手によって茶杓らしく変化いたしました。しかし、私の手に戻ってから、節上は削りすぎで細くなり、時間とともに平らになったかい先は、竹とんぼのようになってしまいました。
力作の茶杓がずらりと並ぶ
終了後、会場は宗康先生のご批評と茶杓プレゼントでとても盛り上がりました。残念ながら抽選にはもれてしまいましたが、楽しい一日でした。また、機会がありましたら参加したいものと思っております。
そして最近は、茶杓を拝見する時の気持ちが、以前と変わってきたことを実感しております。
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2008年5月31日
演出で楽しい茶事
宗康先生招請研究会−【軸飾り】
窪田宗恵(新潟不白会)
軸の巻き方の基本を指導
新潟不白会では、五月三十一日、宗康先生をお招きし、「軸飾り」の研究会を行いました。
普段は、お客様をお迎えする前に、影の仕事として行っている事を、初座の最初にお客様の前でするということで、その意義、軸の各部の名称、取り扱い方を基本から丁寧に御指導いただきました。
お茶事をするときに、様々な演出をし、主客共に楽しんでいたことがよくわかりました。
まだ何をするにも「楽しく」というわけにはいきませんが、楽しいお茶事が出来るように、精進したいと思います。
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2008年5月29日
喫茶往来
家元招請研究会−【茶事の実践】
大山宗貴(高知不白会)
先の五月二十九日の家元招請研究会は、第二回目の「茶事の実践」でした。
茶席は六席、茶席担当者(亭主・水屋二名)以外のすべての客は、お家元、随行の瀬津様を含めて、どの茶席へ行くかを百パーセントくじ引きで決めました。それぞれの茶事終了後、文学館ホールでの集会で、お家元のお話、主客それぞれの話などあり、成功裏に終わったことは実感できました。その辺の詳しい事は、誌面の都合も有り割愛させていただきます。
くじ引きという前提の元に、思わぬ方と相席となり膝をまじえられたことによって、新たな展開もあったことと思われます。
研究会終了後しばらくして、参加された会員の方から「この形式での茶事研究会を一年に一度くらい支部の研究会としても取り上げてほしい」という要望があり、そうすれば『喫茶往来』も行われやすくなるのではないかと、概略すればこういう話でした。
確かに支部としてもこの研究会を、何回か行えば、他の社中とも、まだ知りえなかった会員の方とも親睦が増し、さらにはお家元の仰る『喫茶往来』が、より深まるのではないかと思ったことでした。まだ一つの課題としての段階ですが……。
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2008年4月29日
工夫を楽しんだ亭主役
家元請研究会−【茶の湯実践】
永田範子(青森不白会)
広間での点心と濃茶のもてなし
例年にない早い春の到来に散り始めた桜の下、四月二十九日に青森文化会館にて、家元招請研究会『茶の湯実践』が行われました。前もってくじ引きで決められた方々が、それぞれのお宅に伺う方式です。
未熟ながら、私は初めての大役である亭主を務めることになりました。寄付は大きな六曲屏風を配し、お軸に見立て甲人の油絵をかけ、六名のお客様に白湯を差しあげ、ゆっくりしていただきました。蹲で清めた後、席入り、いよいよです。
お客様一人一人とご挨拶の後、少し早めではございましたが、簡単なお食事をさせていただきました。大山桜の実で作りました薄ピンク色のお酒で、お席が一段と華やいで楽しい場になりました。
床のお軸は「百花似開錦」。正に八甲田の山々は、そのようでございました。花入は耳付青磁に瑞々しいクマガイソウを一輪、脇床にはミャンマーの硯箱、水指はシックな海老の耳付、お菓子は縁高に入れてみました。桜色をした大振りな萩の茶碗にお濃茶を丁寧に心を込めて練りました。お客様の「とても美味しい」との声が大変嬉しく思いました。
お薄は、ベランダでの意表をつくお盆点て
再び、中立ちの後、今まで閉めていましたベランダ側の障子を大きく開けますと、お客様より歓声があがりました。真っ赤な野点傘が目に入ってきたのです。席主山本の心ばかりの演出です。
お薄席はベランダでのお盆点て。テーブルを囲んだ椅子にも赤い毛氈を敷き、ちょうど満開の菜の花をこんもり生けました。お干菓子と春の花々の数茶碗でお薄を一服、開放的な青空と心地よい涼風に、今までの緊張もすっかりほぐれ、会話がボンボンと飛び交いとても楽しい一時でした。
文化会館での報告会においては、思っている事の十分の一も言えず、皆様が発表する度に、それぞれのお席の様子を想像しては楽しさが広がり、今回の講習会は私にとりましては如何に実のある会であったのか、最後にお家元様からのプレゼントは、直筆の色紙でございました。私は「和」をいただき、わが家のお宝として、茶の道を少しずつでも歩んで行きたいと思っております。
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