拝啓
春の日差しがきらめく頃となりました。ますますご清祥のことと存じます。
先日は月釜にご招待賜りまして、誠にありがとうございました。先生ご指導の下にお庭や茶室をめぐらせていただき、大変勉強になりました。
おいしいお食事、美しいお点前、どれをとりましても、
私にとって大変貴重な経験となりました。先生の葉書コレクションにお導きいただきましたことと、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
鷗外の「寿阿弥の手紙」を見直しましたところ、川上不白、宗什、宗寿の名跡を確認いたしました。ひとつひとつ学んで参りたく存じます。今後ともご指導くださいますようよろしくお願いいたします。
時節柄、ご自愛下さいませ。 敬具
三月二十二日
森鷗外記念館
塚田瑞穂
拝呈 昨日はご多忙の中態々ご来館賜り その節は先生ご秘蔵の秋艸道人双幅ご寄贈賜り忝なく厚く御礼申し上げます。大層貴重な料紙に奈良歌の珍品、当館としましても只々有難く重ねて御礼申し上げます。今は大切な機会に公開をと考えております。今後とも何卒よろしくご指導ご支援の程お願い申し上げます。
右 一筆御礼迄 敬具
三月十八日
新潟市會津八一記念館 野中浩俊拝
川上宗雪先生
昨日は月釜のご招待を頂きまして誠にありがとうございました。
久し振りにお伺い致し、雨模様でしたが露地の木々の新緑、そして苔の色のあざやかさに目をうばわれました。静かな茶庭、茶室を私たちが独占している贅沢さを堪能させていただき、心が充実していく時間は何ものにも代えがたいと感謝申し上げます。
お席入りで目にした風炉先屏風の蘆雪の仔犬達のなんと可愛い姿、思わず笑みがこぼれました。雲鶴先生お手作りの春いっぱいの懐石料理を美味しく頂き、後座では正客様より贈られたお茶と二種のお濃茶を茶通箱を用いて家元自ら点てて下さり、〝飲みくらべ〟美味しく頂きました。新柳先生お点前のお薄を頂戴し幸せをかみ締めました。
家元ご一家のお心遣いを頂き、ほんとうに痛み入ります。ありがとうございました。余韻にひたりながら帰路につきました。
かしこ
四月二十五日 月尾宗君
拝啓 先日は月釜におもてなしいただき、ありがとうございました。日の光がさす、綺麗に水が撒かれたお庭に感じ入り、動作の一つ一つに心を注ぐ家元のお点前は深奥に誘うようで、お稽古で通い慣れている場所のはずなのに、いつもとは異なる時間の流れを感じました。お料理、お菓子、お道具なども素晴らしく、純粋にお茶事を楽しみながら同時にお茶を通して作られる一連の体験について学ばせていただきました。今後のお稽古への気の持ちようも変わってくるだろうと思います。このたびは誠にありがとうございました。
これから暑い季節がきます。ご自愛専一にお過ごし下さい。
敬具
五月二十三日 浅平 宗
しっとりと打ち水の御門からお玄関へ。「あ、いらっしゃい」といつも乍ら早々に家元のお迎え。もったいなく、ありがたく、うれしゅうございました。外のお腰掛でしばらくかざお話の後、お茶室へ。お床にお荘り。「まあ、今日はどんなお茶入れにお目にかかれるのでしょう」と胸がドキドキでございました。
今日は広間でと御案内いただき、お床は鍾馗様、お炭のあとの御香のかおり。いつもながら、奥様お心尽くしのご馳走、お庭の青葉を眺めながらの初カツオ、良く冷えたお酒が一層おいしゅうございました。お濃茶、本当にほんとうにおいしく、いただきました。唐物茶入「玉水」を用いて静かにゆっくりゆっくりお練り下さるお姿、感激でございました。
端然と静やかなほほえみで「なーに?」と話しかけを待っているように思え、「実はね......」と昔語りをしたい心持ちになりました。
政宗公のお軸、伊達家に祖先が絵師としてお仕えしており、大崎八幡宮天井絵の製作にも関わっていた(六所)と聞いておりましたので、
このお軸には特別の思いがございました。縁と申しますのか、拝見させていただいてうれしゅうございました。
こちらは梅雨のはしりの様で時々ストーブをたいております。不順の気候、どうぞどうぞお大切にあそばしますよう、ありがとうございました。 かしこ
五月二十八日 佐久間晴子
月釜に参加させていただき、唐物茶入れ「玉水」でお茶をいただいたことは、私共夫婦にとって、一生の忘れられない宝物となりました。ありがとうございます。
後日参加した研究会で、その思いが尚、強くなりました。
又、月釜に参加させてください。社中で自宅の茶を実践しております。社中全員を連れていき、目標を明確にしたいです。
六月十五日 岡田宗春
家元でのお茶事はしばらく振り、二回目でした。今日久し振りに客として出席させていただきました。
お炭のすばらしさは、もう何ともいえません。お炭の美しさは、私の知っている炭点前とは全く別物でした。茶会のアプローチは、もう、始まっていました。
そして〝ととや〟の茶碗で家元の点てた濃茶をいただく…。濃茶は程よい熱さで、苦味も適度にある、うま味が充実したperfectなお茶でした。苦手であった正客をさせていただいたことを本当に喜びました。こんな美味しい濃茶を頂けるなんて…。そして薄茶は、小振りな古い井戸茶碗でいただきました。正客とは、まさに……こういうものなんですね。
また、お花の美しさも別ものでした。薄い光の中での竹の花入、それは、すごいとしか言いようのないもので、蛍袋、半夏生。影の形も何とも言えない、筆舌に尽くしがたい美しさでした。perfect。
また、間にいただく食事は、奥様の手作りで、北欧の器との相性もよく、素敵でperfectなものでした。
お茶事がこんな私的な空間と、そして私的な雰囲気で行われていることを知り、本当にartだな、と、知りました。ありがとうございました。
六月五日 中野裕通