■水屋日記 第11回
昨今の新型コロナウイルスの影響は世界中に広がっていますが、皆様もお仕事や生活にさまざまな影響がでて苦しんでいらっしゃる事と拝察いたします。早くおさまります事と、この危機を皆で無事に、また健康に乗り切れます事を祈念しております。
さて、ここしばらくの稽古や茶会、月釜、その他イベントが全て中止や延期となっているのは御存知の事と思います。その中で私は自分の稽古場の方々と話合い、オンラインで稽古をしてみる事になりました。
以前から興味はあったのですが昨今の事情をきっかけに試しにやってみようという事になりました。まだまだわからない点が多く、全て試しながらの稽古でした。先日行った様子をこちらに記させていただきます。
今号が発行される頃に世の中がどうなっているのかわかりませんが、しばらく稽古場の仲間同士でお会いできていない方々の参考にもなればと思います。
四月、五月で数回から十回程開催する予定です
私は茶室にパソコンやカメラを持ち込み、参加者の皆様は各自宅から、約束した時間にオンライン会議ツールに接続するという方法です。
時間になると続々画面上に参加者が集まってきます。普段、PCやスマートフォンなどのデバイスを扱うのが苦手な方には、参加方法や諸注意を事前に伝達しておきました。それでも開催の一番の障壁はオンライン会場に入ってきてもらうまでだったと思います。
参加のための操作で困った時には電話やメッセージで操作アドバイスをしましたが、最後は各自で手元のデバイスを操作しなければいけません。 機械の扱いが苦手な方にどこまでストレスなく最初の壁を乗り越えていただけるかが難しい点でした。 入ってきてしまえば、後は大きなトラブルはないというのが、ここまでの少ない試行回数の中での経験則です。 このような世情ですから、今は画面上であっても久しぶりに人と話すだけでも気分が変わります。皆で手元にお茶を用意して、乾杯するように一斉に飲んでみました
稽古の流れとしては、参加者宅には茶道具が揃っていない事がほとんどなので、まず私が点前をします。その後、その点前について解説をしたり質問を受けたりします。 続いて道具の紹介や茶室のしつらえについての話をします。ひととおり済んだら、各自手元で抹茶を点てて(抹茶の用意が無い人はコーヒーなど)喫茶しながら近況報告など雑談をして終えます。だいたい二時間くらいになる事が多いです。
これまでの経験から得た所感を以下に。
(1)茶人にはPCなどの扱いが苦手な人も多く、そういう方にとっては参加するまでが最大のハードル。
(2)そんな人でも逆に一度参加してしまうと次はかなりそのハードルが下がるのを感じています
(3)参加者宅に茶道具がそろっていないのも同様に壁となります。茶碗などの小物はある家も多く、部分部分はできるかもしれません。
(4)また参加者が一人ずつ点前すると他の参加者が画面の前で待っているだけになるので、全員で一斉に行うような稽古方式でないと難しいかと思います(ヨガや体操のクラスのような)。テーブル茶を一斉にやったりしました
(5)初めて画面越しで点前をした時は、きちんと見られているのかわからず、強い違和感がありました。(本来茶室内で隣にいると、お客の視線や反応の空気感が何となく伝わるものですが、画面越しでは伝わりにくいです)。しかし三回目くらいから感じ取れるようになってきましたので、 慣れと人間の感覚は不思議です。
(6)講演、講義などは十分可能です。
(7)遠方の方など、直接会いづらい方々との繋がりは強められるかもしれません
(8)参加者全員で一斉に何かをするのはオンラインイベントの名物になりつつあります。茶の湯の場合、茶を同時に点てて飲むなど
(9)現実の完全代替はできません。当たり前ですが、本物を味わう事や触る事はできません。今は人と会いたい欲求が増しているので、オンラインイベントも乱立していますが、コロナ終息後には「(完全な)代替」としての役目は終わるだろうと思います。オンラインと現実世界とでは長所、短所、特徴が異なるので住み分けが必須でしょう。現在に最適化させ過ぎても長い目で見たら続かないと思います。オンラインで参加する人にとっての目的や意義をしっかり考えたいです。
(10)直接お会いできる日がより待ち遠しくなりました