江戸千家 > 会報から(133号) > 水屋日記(8) 「小習 ⑴」

■水屋日記 第8回

「小習 ⑴」

川上博之

 今年は家元の研究会のテーマの一つが小習となっています。それに沿う形で、茶事や稽古の「仕度」に関する話を取り上げることになりました。コラム的に続いてきた連載ですが、今号からしばらくは少し教科書的な内容となっていくと思います。
 さて茶事や稽古の仕度と言っても、ご存じの通り様々な仕事があります。それらの中でどんな茶会や稽古でも十中八九準備しなければいけない場所は、(一)床の間 (二)点前座 (三)水屋。これ以外に露地や寄付き、別に使う茶室などあれば準備するのはもちろんですが、どのような稽古場であれ茶会であれ、上記三か所の準備をしない事はほとんどないのではないでしょうか。この連載ではこのような必須の事について書いていきます。

【掛軸の掛け方】

今回は掛軸の扱いから始めます。

①掛軸の巻緒をほどきます。結んでいる端を引くとほどけます。

②巻緒は端に寄せます。

③畳の上にて少し開きます。風帯がある場合は、畳まれているので開いて下側に垂らすようにします。

④まだ半分以上巻き上がっている軸木の真中を片手で持ち、掛緒の中央を反対側の手で持つ、または矢筈(高所に軸を掛ける為の棒)に掛けます。

⑤立ち上がりながら持ち上げ、掛緒を釘に掛けます。

⑥矢筈は脇に置き、下部両端の軸先を両手で持ちながら下します。落とすのではなくゆっくり開き下げていくようにします。

⑦掛けたら後ろへ下がり、高さの具合や水平であるかを確認します。水平さは掛緒を左右に少しずらす事で対処できます。高過ぎる場合は、自在を使って調整します。低すぎるときは巻き上げを使います。


【掛軸の外し方】

①【掛軸の掛け方】⑥の逆のようにして、下から両手で巻き上げていきます。

②【掛軸の掛け方】⑤のようにして、片手は軸木、反対の手または矢筈で掛緒を持ち、釘から外し畳の上に【掛軸の掛け方】④のように置きます。

③風帯が一直線になるように畳みます。よくある間違った畳み方と比較して下さい。正しい畳み方では、片方の風帯の下にもう一方がもぐり込むようになります。
 間違った畳み方では風帯に捻じれた折り目がついてしまいます。

正しい畳み方

間違った例

④巻緒を掛軸に巻いていく前に、その下地として巻紙を当てておく事があります。巻緒が当たる部分の保護の役目を果たします。
 畳んである風帯の所に巻紙の端を当てておいて掛軸本体を巻ききります。こうして掛軸に挟み込む事によって巻紙がずれないように固定します。

⑤巻緒を掛軸の中心に巻いていきます。この際、一巻き毎に交差させて左右交互に巻緒を通す巻き方もあります。ここでは交差させず巻きました。

⑥巻緒がゆるまないように結ぶため、掛緒の片側から巻緒を輪にするようにしてくぐらせます。

⑦くぐらせた輪の先を掛緒の反対側に通します。巻緒が「へ」の字になります。
 この他にも結び方や巻き方は複数ありますが、どのような巻き方をするにせよ掛け軸や緒が痛んだり折れたりしないようにする事が大切です。

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