不忍池蓮見の朝茶に参加させていただき、日常では味わう事のできない充実した朝のひとときを過ごしました。
少し湿り気のある早朝の風に荷葉の波がざわざわとうねり、時折紅の蓮の花が姿を現す。この波を渡っていくと浄土にいけそうだ。かがり火のような紅蓮が導いてくれると、昔の人はこんな事を想像したかも知れない。荷葉に散り落ちた露が銀色を放ち自在に動いていた。
宗匠のお言葉に従い、目を閉じ静かに呼吸し風の運んでくる荷葉の精気を取り込む。
家元邸は打ち水がなされ、御門をくぐれば別天地が広がる。お心尽くしの朝餉のおもてなしが始まり、蓮の精気をのみこんだ脳神経、身体の細胞は滋味あふれるお料理に活発に反応し、やがてゆったりとおだやかにほぐれていった。本当に心地よくいただきました。
そして至福のお濃茶。宗匠自ら練られた濃茶を味わい、たとえようもない充足感に満たされました。お茶事はもしかしたら 現世一刻の浄土ともなりうるのかも。
草々
平成三十年七月七日
平櫛京雪