第四回学術集会 会長 菅 栄一
平成二十九年十月七-八の両日、岩手県盛岡市で全国より七百名を超える高齢者の健康に関わる多分野・多職種が一堂に会して、共通の理念の下で、骨も心も折れない社会の実現に向けて活発な討議が行われました。これまで学術集会の特別講演として色々な分野の第一人者の方から健康・体の動きに関する講演を伺ってまいりました。今回の学術集会の特別講演として江戸千家家元に「茶の湯と体操十種」と題してご講演をいただきました。
茶の湯門外漢の私が家元とお会いするきっかけは、家元ご自身が中高年の方々の健康を念頭において考案され、実践されている「体操十種」のDVDを岩手不白会に在籍の医学部の先輩から見せていただき、家元来盛の折に、整形外科また転倒予防に関わる者としての感想をお話しする機会をいただけたことでした。
家元は、体を動かす仕組みや姿勢維持に大切な筋肉について興味を持たれ、質問にお答えするのがタジタジだった記憶があります。
その後、機会を得てご門弟の方々と一緒に家元から直接ご指導をいただきました。そして日本伝統の茶の湯の精神・礼法、坐禅、太極拳、相撲などを取り入れた転倒予防に効果のあるとみなされる様々な要素を含む、科学的で実践的かつ日本文化を表現する独自の体操であることを体感させていただきました。そして私がお世話する転倒予防の学術集会でも是非ご講演いただきたいと、お願いしお引き受けいただいたのでした。
ご講演は、東日本大震災の鎮魂と復興の願いを込めた宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」を篠笛で演奏いただくことから始まり、茶の湯の歴史と成り立ちを伺い、後半で「体操十種」を実演解説いただき感銘致しました。背筋がしっかり伸びて柔軟なお家元のお身体に参加者から感嘆の声も上がりました。遠路来盛の上、当学会の特別講演に相応しいご講演をいただき、誠に有り難く御礼申し上げます。今後の転倒予防活動に活用させていただきたいと思います。
(菅整形外科院長)